研究課題
今年度は、膵β細胞の脂肪毒性に対するATP-binding cassette transporter A1 (ABCA1)遺伝子発現の役割について検討してきた。これまでの検討でT N F-α、AngiotensinII, OxLDLなどによりABCA1発現が低下し、膵β細胞にコレステロールが沈着し脂肪毒性が惹起される。このような膵β細胞ではグルコース応答性インスリン分泌が低下し、耐糖能異常の原因となっていると考えられる。そこでABCA1遺伝子発現を促進化合物のスクリーニングをおこなった。女性ホルモンがABCA1発現を促進することより、女性ホルモンの代謝産物を網羅的に検討した。その代謝産物の中で、2-Methoxyestradiol(2-ME)がABCA1発現を促進することを見出した。2-MEはABCA1プロモーター活性を増強したが、この効果はPI3K経路を阻害した後に減少した。Aktまたはp110の過剰発現はABCA1プロモーター活性を誘導し、ドミナントネガティブAktは2-ME2によるABCA1プロモーター活性の阻害作用を示した。さらに、2-MEはAktとFoxO1の急速なリン酸化を刺激し、FoxO1の核内蓄積を減少させた。クロマチン免疫沈降法では、FoxO1がABCA1プロモーター領域に結合していることが確認された。ABCA1プロモーター領域のFoxO1結合部位を変異させるか、FoxO1特異的siRNAで処理すると、ABCA1発現に対する2-ME2の効果が失われた。これらの結果から、2-MEはPI3K/Akt/FoxO1経路を介してABCA1発現を促進した。一方、2-MEは膵β細胞内のコレステロール含量を低下させていた。今後は、脂肪毒性を解除し、グルコース応答性インスリ分泌を改善する方策にについて、メカニズムを含めてさらなる検討をおこなう。
2: おおむね順調に進展している
膵β細胞に脂肪毒性の解除に向けて計画通り研究は進んでいる。
ターゲットとして脂肪毒性に関連するマスター遺伝子ABCA1を促進する化合物についてさらに検討を進める。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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