研究課題/領域番号 |
21K08534
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
及川 洋一 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30296561)
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研究分担者 |
島田 朗 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60206167)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 免疫制御 / 1型糖尿病 / C-ペプチド / 自己免疫 |
研究実績の概要 |
1型糖尿病の病態形成における自己抗原としてのC-ペプチドの意義を明らかにすることを目的とし、計画の予定通り、末梢血中のC-ペプチド特異的interferon(IFM)-γ産生単核球数ならびにInterleuin(IL)-10産生単核球数をELISpot法を用いて検討を開始した。目標患者数は1型糖尿病100 名、2 型糖尿病(コントロール)50名を設定していたが、現時点において1型糖尿病患者5名について解析を行った。その結果、当初の想定とは異なり、interferon(IFN)-γ産生単核球をELISpot法で同定できた症例が1例も存在しなかった。一方、IL-10産生単核球数(中央値(最大値-最小値))については単核球3.5×10^5個あたり、1.8(0-43.8)個であった。 続いて、各種臨床パラメータとスポット数との関連について検討を行った。その結果、IFN-γについては全例においてスポット数が0個であったことから、各パラメータとの相関性は検討不可であった。一方、IL-10 については、スポット数と罹病期間との間に逆相関の傾向がみられた。 今回の検討の結果、C-ペプチドに対して免疫制御に関わるIL-10産生単核球(リンパ球)が1型糖尿病患者の末梢血中に存在しており、C-ペプチドが1型糖尿病の病態形成に対して抑制的な役割を担っている可能性が示唆された。しかし、IFN-γ産生スポットは検出されなかった。IL-10とは異なり、C-ペプチドは炎症反応を惹起するほどの抗原性を有していないものと考えられた。検討数は非常に少ないが、以上の結果は、C-ペプチド分子を用いたワクチン療法が1型糖尿病の発症阻止や進展予防に役立つ可能性があることを示唆するものであり、大変興味深い結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
C-ペプチド特異的IFN-γ産生性スポットが1型糖尿病患者で全く認められなかったため、培養条件やペプチド濃度の調整など実験プロトコールの修正を繰り返し行っていた。また、未修飾のC-ペプチドでは十分な抗原性が期待できないと考え、C-ペプチドに様々な修飾(いくつかの膵島関連蛋白(アミリンやクロモグラニンなど)を構成するペプチドの一部をC-ペプチド内の一部のペプチドと融合させるなどの工夫)を加えたりしていた。その結果、被験者を順調に増やすことが出来ず、予定よりやや遅れている状況で令和3年度を終えた次第である。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、C-ペプチドの抗原性を高める工夫として、C-ペプチド内の一部のペプチドに他の膵島関連蛋白(アミリンやクロモグラニンなど)内に含まれる一部のペプチドを融合させたHybrid insulin peptide(HIP)を作製し、これらHIPs(C-ペプチド関連抗原)に対する免疫応答能をELISpot法で評価し、1型糖尿病の病態形成における意義を明らかにしていく予定である。 1型糖尿病の発症時は膵島関連抗原に対する自己免疫応答が非常に強い状態にあると考えられるが、その際、しばしば膵外分泌酵素の上昇が観察される。C-ペプチドに対する免疫応答が膵外分泌組織にも波及し、膵外分泌酵素の上昇に寄与している可能性があることから、膵外分泌組織に特異的蛋白に対する2つの抗体(抗ラクトフェリン抗体や抗Carbonic anhydrase抗体)とC-ペプチドに対する免疫応答能との関連性についてもあわせて調査をしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新たに検討予定であるいくつかのHIPの合成費用として令和3年度中に使用予定であったが、HIPの設計に時間を要してしまい、令和3年度中の発注が間に合わなかった。その結果、57,206円が令和4年度に繰越となった。令和4年度になり、HIP合成費用として早急に利用予定である。令和4年度も引き続きELISpotキットや関連消耗品の購入費用として助成金を使用予定である。
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