研究課題
1型糖尿病は膵β細胞を標的とした細胞性免疫が関与する自己免疫疾患と考えられている。本研究では当初、1型糖尿病における自己抗原としてのC-ペプチドの意義を明らかにすることを目的としていたが、予備調査の結果、1型糖尿病患者の末梢血ではC-ペプチド特異的IFN-γ産生単核球が全く検出されないことが判明した。そこで、C-ペプチドの抗原性を高める工夫が必要と考え、C-ペプチドとインスリン分子のペプチドを融合させたHybrid insulin peptide(HIP)に着目することになった。いくつかの候補HIPの中から、今回はC-ペプチドとインスリンB鎖9-23番ペプチドとの融合ペプチド(B9-23E)に注目し、B9-23Eに対する末梢血単核球の免疫応答をELISpot法で評価し、1型糖尿病におけるB9-23E分子の免疫学的な役割を検討することとした。その結果、B9-23E特異的なinterferon(IFN)-γ(炎症促進)、interleukin(IL)-10(炎症抑制)産生リンパ球が2型糖尿病患者(n=19)と比べて1型糖尿病患者(n=23)の末梢血中で各々増加傾向(IFN-γ)あるいは有意な増加(IL-10)がみられた。続いて1型糖尿病患者を対象として罹病期間1年未満群と1年以上群に分けてB9-23E特異的な細胞性免疫応答を比較したところ、IFN-γについては両群間に差はみられなかったが、IL-10については罹病期間1年未満群の方が1年以上群と比べてスポット数が有意に多かった。IFN-γについては、1型糖尿病の病態が持続的であること示唆する所見と考えられた。一方、IL-10については、急性発症1型糖尿病でしばしば観察されるハネムーン期の病態との関連性が示唆された。以上より、1型糖尿病の病態形成において、B9-23Eに対する免疫応答が重要な役割を担っている可能性が示唆された。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Journal of Diabetes Investigation
巻: 14 ページ: 570~581
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Scientific Reports
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