研究課題
本研究の目的は、SGLT2阻害薬による長期の体内エネルギー利用制限効果が加齢現象に及ぼす影響を明らかにし、そこに寄与する分子機構について詳細解明を行うことにある。R4年度の実験計画としては(1)若年期より1年間のPair feedingを行ったマウスのサンプリングを行っている。非常に興味深い事に血中のMDA濃度はSGLT2阻害薬投与群で有意に低下しており、寿命延長の作用機序の一部を説明しうるものと考えられた。サンプリングした骨格筋をRNA-seqを行い、骨格筋における老化現象を説明しうる分子機構を解明しようとしたが、RNA-seqでは明らかに有意な遺伝子発現変化を認めなかった。肝臓、脂肪組織などで組織学的検討を行っているが、SGLT2阻害薬投与群で有意に脂肪肝は改善しており、繊維化も抑制されていた。脂肪組織においては脂肪細胞サイズは投薬群で縮小しており、マクロファージ浸潤も抑制されていることが判明した。長期にわたる介入試験であり、寿命延長に及ぼすkey moleculeの同定には至っていないが、テロメア長の延長効果は確認できている。(2)中、壮年期からPair feedingを行い、SGLT2阻害薬が寿命延長に寄与するかの検討を行う為、マウスに1年間高脂肪食を与えて、その後Pair feedingによるSLGT2阻害薬投与を開始している。当初の想定とはことなり、SGLT2阻害薬投与による握力の向上や寿命延長効果は有意ではなかった。このことはSGLT2阻害薬はより若年期からの介入の方が健康寿命により大きく寄与する可能性を示唆しており興味深い結果となっている。
2: おおむね順調に進展している
若年期介入のサンプリングはすでに行っており、SGLT2阻害薬投与群でのテロメア長の延長および、血中MDAがSGLT2阻害薬投与群で低下しているという新しい知見を得ており、組織学的にも脂肪肝の改善、繊維化の抑制効果、および脂肪組織における脂肪細胞サイズの縮小などの所見を得ている。また、中、壮年期からの介入のマウスも1年間の高脂肪食負荷を終了し、Pair feedingによるSGLT2阻害薬投与を継続しており、興味深いことに中、壮年期からの介入ではSGLT2阻害薬投与群では握力の向上や有意な寿命延長効果が認められていないことからSGLT2阻害薬の投与はより早期で効果があることが判明した。
若年期介入と比較して、中、壮年期介入では握力向上や寿命延長効果は認められていない。この点に着目して、中、壮年期介入群でのサンプリングを行い、若年期介入と異なる点を解明していく。
購入した物品が当初予定していた額より安価で抑えられた為、次年度使用額が生じたが、ほぼ予定通りの使用金額である。今後Western blotまたは免疫染色用の抗体購入、ELISA購入費などに使用していく予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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