研究課題
緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)患者剖検膵をエンテロウイルス(EV)のエンベロップ蛋白に対する抗体およびEV生成酵素である2Aproに対する抗体(研究者が作成)を用いて免疫組織学的に検討した。この結果SPIDDM膵にはMDA5, TLR4, IFNβが発現しており、2Aproにより、罹病期間とともにMDA5, IFNβが破壊感染される現象を見出した。SPIDDM膵におけるEVは糖尿病の発症後10年以上の例でも膵島に検出された。この成績から、EV感染による宿主への自然免疫の抑制が起こり、EVの持続感染がおこることが明らかとなった。EVの増殖の指標である2Aproの検出が可能となりEV感染動態の解明に寄与することとなった。さらに、SPIDDM患者膵においてEVが膵島細胞のみならず、膵腺房細胞にも感染しておりこの方法に関しては、Jimbo E, Kobayashi T et al. J Diab Invest 13:435-442, 2022に発表された。さらにβ細 胞は自然免疫センサーであるMDA5と下流のIFNB1が発現亢進していることを認めた。EV感染のある膵腺房細胞にも同様にMDA5と2Aprの発現がみられ、EV感染細胞 はacinar-to-ductal metaplasia(ADM)と前癌病変といわれているPanIN病変をみとめた。以上の成績はSPIDDM例においてEVが膵島と膵腺房細胞に持続感染し、β細胞の破壊、腺房細胞の異形化を起こすこと、経年的にこの病変も進行し、PanIN病変が増加すすことが明らかになった。 上記の成績 Sci Rep 13: 6977, 2023、Nat Rev Endocrinol 20: 312, 2024 掲載された。
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Nat Rev Endocrinol
巻: 20 ページ: 312
10.1038/s41574-024-00975-z.
Sci Rep
巻: 13 ページ: 6977
10.1038/s41598-023-33011-7.