1.Aldolase B(AldoB)ノックアウト(KO)マウスの解析 我々が作製した全身性のAldoB KOマウスはフルクトースの腹腔内投与により、急性の低血糖を呈し、HFIモデルマウスと確認できた。アデノウイルスにより野生型、酵素活性欠失型AldoBを肝臓に発現させたところ、低血糖の抑制にはAldoBの酵素活性が必要であったことから、AldoBの基質フルクトース1リン酸(F1P)の代謝不全が本病態の原因と考えられた。メタボローム解析より、AldoB KOマウスの肝臓ではF1Pの劇的な増加と多くの中間代謝産物の変化が確認できた。AldoB KOマウスの代謝表現型解析から、AldoB KOマウスでは耐糖能、インスリン感受性の改善がみられた。また、AldoB KOマウスでは糖新生基質負荷時に血糖の上昇が抑制された。これらは、①AldoBが糖新生の重要な酵素である、②インスリン感受性の改善により糖新生が抑制された、二つの可能性を示唆している。また、AldoB KOマウスの肝臓では摂食時に発現がみられる遺伝子が絶食時においても発現が維持されていた。 2.初代培養肝細胞を用いたHFIの解析 我々はAldo B KOマウスの肝臓から初代培養肝細胞の採取方法を確立した。そこで、野生型、AldoB KO初代培養肝細胞にフルクトース刺激をしたところ、AldoB KO特異的に細胞内ATPの減少とAMPKの活性化がみられた。AMPKの阻害剤を用いて糖新生への効果を検討したところ、AMPK阻害ではフルクトース依存的な糖新生の阻害は抑制されなかった。一方、F1Pの標的分子の検討を行い、Aldolase AおよびFBPase1の活性がF-1Pにより阻害されたことから、AldoB欠損におけるフルクトース負荷時の低血糖の一つの原因としてF1Pによる糖新生の阻害にあると考えられた。
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