研究課題/領域番号 |
21K08544
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研究機関 | 日本赤十字社和歌山医療センター(臨床研究センター) |
研究代表者 |
稲葉 秀文 日本赤十字社和歌山医療センター(臨床研究センター), 糖尿病・内分泌内科部, 副部長 (70447770)
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研究分担者 |
松岡 孝昭 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10379258)
井上 元 日本赤十字社和歌山医療センター(臨床研究センター), 糖尿病・内分泌内科部, 部長 (20260606)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がん免疫療法 / 抗原 / 甲状腺 |
研究実績の概要 |
我々はこれまで、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による甲状腺障害に関する疾患感受性HLAに関して研究を行ってきた。まず、ICIによる甲状腺障害を永続性甲状腺障害、および一時的甲状腺障害に分類して、臨床経過や好発HLAの違いを検討し、その研究成果を2021年度内分泌学会にて発表した。また、ICIによって甲状腺障害を発症する患者において、しばしば下垂体障害、膵臓障害(1型糖尿病)、副腎皮質機能障害を発症することが判明した。以上より、ICIによる内分泌臓器障害における共通抗原の可能性が示唆された。このことから、本研究がさらに発展し、新たな内分泌免疫ネットワークにおける甲状腺抗原に加えて、他の内分泌臓器障害の原因となる抗原を視野に入れたメカニズムを明らかにすることが可能であると考えられた。特に、自己免疫を基盤とするICIによる甲状腺障害および1型糖尿病に関しては、まずICIによる1型糖尿病の臨床経過や疾患感受性HLAを2022年に報告し、ICIによる甲状腺障害との共通因子につき検討を行っている。 加えて、下記研究を遂行した。 (1)コンピューターアルゴリズムを用いた甲状腺・内分泌エピトープ予測:In silico Immunoinformatic(SYFPEITHI及び我々のEpiMatrixプログラム)(J Clin Endocrinol Metab 2010、Thyroid 2009、Endocrinology 2013)を用いHLA-class I, II分子に対して甲状腺・内分泌エピトープを抽出した。 (2)In vitro 結合アッセイによって、甲状腺・内分泌エピトープを一部同定できた。今回の方法においては、我々の確立したアッセイ系(J Clin Endocrinol Metab 2006)を中心に甲状腺抗原アッセイ方法を最適化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床研究部分は、高度型がん拠点病院である和歌山日赤及び和歌山県立医大において倫理委員会の承認を受け、研究分担者および研究協力者と協力し、研究が順調に遂行できた。臨床検体に関しては、検体情報を匿名化し、疾患群とコントロール群に分け、系統的にリスト化して整理を進めた。基礎研究部分は、和歌山県立医大において実施され、研究分担者および研究協力者は本研究課題遂行に必要な手技や評価方法を熟知しており、最先端機器を用い十分に研究が推進された。基礎的研究においても、一部のリンパ球反応性試験の有望な結果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、基礎的および臨床的研究に関して、代謝内分泌学の基礎研究者、免疫学を専門とする研究者や、HLAに関する研究者と継続して共同研究を行う。また、必要時に協力企業のサポートを得つつ、研究対象症例数を増やすことを検討する。 今後の研究は、In vivo / Ex vivoの甲状腺エピトープ同定と、疾患感受性HLAトランスジェニックマウスの作成を試みるとともに、臨床患者におけるICIによる甲状腺障害や内分泌障害の宿主素因の検討を予定している。最近の研究においては、ICIによる内分泌臓器障害と、抗腫瘍効果が相関していることが明らかになっているため、以上の結果に基づき、ICI治療における新規バイオマーカーの同定を研究目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
主にCOVID-19の影響により、試薬調整や機器使用の調整が難しい時期が存在した。このため、当該年度に計画していた実験の一部が繰越になった。さらに実験装置のメインテナンス、および研究協力者との実験の調整を行う時間を十分にとることができなかった。今年度はCOVID-19の感染拡大が落ち着いており、5月上旬から全ての実験器具を使用できる体制となっており、すでに研究協力者との連絡を行い実験を行っている。次年度使用額については、当該年度および本年度の研究(免疫学的アッセイ、動物飼育費、消耗品等)に必要な経費として使用する計画である。
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