研究課題/領域番号 |
21K08546
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
工藤 和洋 弘前大学, 医学研究科, 助教 (50772026)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 神経障害 / 腸内細菌 / 実験病理学 |
研究実績の概要 |
糖尿病は腎症、網膜症、神経障害といった合併症を起こし、患者のQOLを著しく低下させる。その中で多発神経障害(DPN)は最も早期から発症し頻度が高いものです。DPNに関しては発症早期の介入が重要で、早期病変の病態の把握により、その予防、根治も期待されます。 一方、弘前大学医学部は2005年より、弘前市郊外の岩木地区住民の健康増進、平均寿命の延長を目的とした「岩木健康増進プロジェクト健診(岩木健診)」を毎年1,000人以上の協力者に対して健診を行っています。検査項目は毎回2,000項目にわたり、世界でも類を見ない健康、疾病に関するビッグデータを構築しています。 申請者が所属している講座では2017年より、同健診において表皮内神経痛覚閾値: PINT(pain threshold of the intraepidermal nerve terminal)試験による足背皮膚の感覚検査を行っています。本検査は日本光電より発売されている装置、PNS-7000を用いた小径神経機能評価検査です。皮膚に電極を貼付し、微弱電流で刺激し、反応の有無で痛覚閾値を約5分で評価します。この方法により、従来は皮膚生検でしか評価できなかった表皮内小径神経の障害を非観血的に検討可能となりました。 我々は正常高値HbA1c値症例で既に表皮末梢神経痛覚閾値(PINT)が上昇しうること、血中の Lipopolysaccharide-Binding Protein (LBP) 濃度が早期DPNのバイオマーカーとなりうることをこれまでに報告してきました。血中LBP上昇の原因として腸内細菌叢の乱れ dysbiosis が知られています。Dysbiosis は2型糖尿病の促進因子であることが近年知られていますが、DPNの発生と腸内細菌叢との関連の有無は不明です。そこで本年度は大規模検診のデータを用いて、腸内細菌叢と痛覚閾値の関連について研究しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模検診のデータを用いて、腸内細菌叢と痛覚閾値の関連について研究したところ、痛覚閾値が上昇している群でバクテロイデス群が有意に減少していることを解明した。近日中に論文として投稿する。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験により、DPNの有無で腸内細菌叢が異なることを明らかにする。 健常ラット (コントロール群)5匹、Goto-Kakizaki (GK)ラット(2型糖尿病早期神経障害モデル)5匹を飼育し、生後48週に以下の検討を行う。1)腸内細菌叢:各群について便を採取し次世代シーケンス・アンプリコン解析で網羅的に検査する。解析は(株)テクノスルガ・ラボに外注する。2)採血検査:空腹時血糖値、HbA1c、HOMA-IR、TNF-α、IL-6、LPS、LBP、CRPについて外注する。3)皮膚の炎症の評価:皮膚を採取し、ウエスタンブロットによりTLR4, pJNK, pIRS1Ser307の蛋白量、免疫沈降によりTLR4およびそのアダプターであるMyD88の蛋白量を評価する。また、RNAを抽出し、RT-PCRでTNF-α、IL-6のmRNAを定量する。4)皮膚の病理組織学的検討:皮膚をPGP9.5免疫蛍光染色により、表皮内のC線維の数量を評価する。また、免疫蛍光染色により小径神経におけるTLR-4の発現強度を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の開始が遅れた為。次年度動物実験に使用する。
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