研究実績の概要 |
γ細胞は膵内分泌細胞の一つで、膵頭部に多く存在する。γ細胞が分泌するPPは摂食や肥満の抑制、脂質代謝異常症の改善に寄与することが知られているが、γ細胞自身の生理的意義については不明な点が多い。そこで我々はγ細胞の生理的機能を明らかにする目的でγ細胞の量の変化するモデルを探索した。その結果、プログルカゴン遺伝子欠損マウス(Hayashi, Y. et al., Mol. Endocrinol., 2009)でγ細胞が過形成すること、正常膵内分泌細胞ではあまり見られないPP+ グルカゴン+(GCG+)二重陽性細胞が多数存在することを見出した。私たちは、グルカゴン受容体Floxマウスを樹立し、検討を進めた。その結果10週例の全身性グルカゴン受容体欠損マウスではコントロールに比べ、γ細胞の細胞量が優位に上昇した。この結果はグルカゴンシグナルがγ細胞の過形成の制御に関与している可能性を示唆するものである。次にどこの組織のグルカゴンシグナルがこれらの現象を制御するのかを明らかにするために、肝臓特異的グルカゴン受容体欠損マウスを作製し、その表現型を解析した。その結果、肝臓特異的グルカゴン受容体欠損マウスでは、γ細胞の顕著な過形成やGCG+ PP+二重陽性細胞の出現が観察された。この結果は、肝臓でのグルカゴンシグナルはγ細胞の過形成や、GCG+ PP+二重陽性細胞の出現に関与することを示唆する可能性が考えられた。私たちは、γ細胞の過形成のメカニズムを解明するために野生型マウスの単離膵島を用いて解析を行なった。その結果、グルタミン添加によってγ細胞の過形成が誘導された。またmTORの阻害剤であるラパマイシンによりγ細胞の過形成が抑制された。この結果は、γ細胞の過形成はグルタミンによるmTORの活性化によって誘導される可能性が考えられた。
|