研究実績の概要 |
本研究の目的はブドウ糖によるインスリン分泌機構における代謝性増幅経路を担う新規分子を過去の我々の知見をもとに新たに同定することである。ブドウ糖による代謝性増幅経路の存在は広く認知されるようになったが、その分子基盤は短期的に見通しの立つアプローチ法がなく具体的な進展はほとんど見られていない。我々は以前報告した、25KDの膵島タンパクのパルミチル化がブドウ糖による代謝性増幅経路に関与していることを報告しているが、本研究ではこのタンパクの同定を試みた。ラット膵島を用いてプロテオーム解析によりブドウ糖によりCa2+非依存性に変化するスポットを同定し、それが過去に報告した25KDタンパク( Yamada S, Komatsu M et al. Endocrinology 144:5232, 2003)であることを確認した。当該スポットタンパクを質量分析(LC/MS/MS)にかけprogesterone receptor membrane associated component 1(PGRMC1)であることを突き止めた。この発見は新規性が高いが、その生理的、病理的意義を示唆するデータが得られるまでは公表を控えている。さらにPGRMC1分子内に一か所、化学的にパルミチン化される個所が存在することまで明らかになった。さらにSNAP23もほぼ25KDであり、新規基盤分子のもう一つの候補であることを見出した。SNAP23はパルミチル化されることはすでに報告されている。 現在は、次のステップとして、PGRMC1の膵島内の組織分布を明らかにするため、いくつかの条件で免疫組織染色をこころみている。さらにブドウ糖刺激で実際にパルミチル化が変動するかの確認段階である。
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