研究課題/領域番号 |
21K08552
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
萩原 大輔 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (70710086)
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研究分担者 |
有馬 寛 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50422770)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バソプレシン / グルココルチコイド / 仮面尿崩症 / 大細胞性バソプレシンニューロン / 小細胞性バソプレシンニューロン |
研究実績の概要 |
グルココルチコイドによる体循環へのバソプレシン(AVP)分泌制御が大細胞性AVPニューロンにおけるAVP産生を介しているか否かを明らかにする目的で,野生型マウスにデキサメサゾンもしくはグルココルチコイド受容体拮抗薬であるRU-486を腹腔内投与し,視床下部視索上核におけるAVP mRNAをin situ hybridizationにて評価した.現在までの検討では両群で視索上核におけるAVP mRNAの発現に有意な差を認めなかったが,今後は再現性の確認やAVP hnRNA発現の検討などが必要と考えている. 予備実験において,視索上核および室傍核の大細胞性AVPニューロンには,定常状態および低ナトリウム血症下のいずれにおいてもグルココルチコイド受容体の発現は認めなかった.以上より,グルココルチコイドが大細胞性AVPニューロンのAVP分泌に影響を与えるためには,大細胞性AVPニューロンの活性を調節する入力ニューロンにグルココルチコイド受容体が発現している必要がある。大細胞性AVPニューロンに入力するニューロンを標識する目的に,AVP-Creマウスの視索上核にCre依存性に蛍光タンパクを発現させる逆行性アデノ随伴ウイルスを注入した.同マウスの解析にて,終板器官,脳弓下器官および正中視索前核など水代謝やナトリウム代謝に重要な役割を持つ神経核において,視索上核の大細胞性AVPニューロンに入力するニューロンを標識することに成功した.また,免疫組織化学によりこの標識ニューロンはグルココルチコイド受容体を発現していることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
グルココルチコイドが大細胞性AVPニューロンにおけるAVP産生を調節しているか否かを検討するために,当初は野生型マウスにデキサメサゾン投与もしくは副腎摘出を行う予定だったが,副腎摘出ではミネラルコルチコイド不足による循環血漿量低下を介したAVP産生を区別できない懸念があると考えられたため,グルココルチコイド受容体拮抗薬であるRU-486投与を行うこととした. 従来当教室では,AVP mRNAの評価としてラジオアイソトープによるin situ hybridizationを用いていたが,これまでに使用していたラジオアイソトープや高感度のフィルムが販売停止となり実験系の確立に時間を要した.また,fluorescent in situ hybridizationでも検討できるように新たな実験系を立ち上げた.
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今後の研究の推進方策 |
現在得られている結果としては,デキサメサゾン投与群とRU-486投与群で視索上核におけるAVP mRNAに有意な差を認めていないが,この結果により今後の方針が決定するため慎重な判断が必要になる.薬剤の投与方法を腹腔内投与から脳室内投与に変更すること,AVP mRNAはその発現量が非常に高いことから有意差を見出すことが出来なかったことを考慮してAVP hnRNAの発現を検討することなどで,この結果の再現性を確認する.
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次年度使用額が生じた理由 |
免疫組織科学に必要な抗体や各種試薬は、これまでに使用していたものが残っていたため、本年度に購入する必要はなかった。上記の抗体や各種試薬に加えて、in situ hybridizationに必要なラジオアイソトープや各種試薬およびウイルスベクターなどの購入資金に充てる予定である。
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