研究課題
前年度は、卵胞に発現する時計遺伝子および日内リズム調節因子とBMPシステムとの相互作用を研究してきたが、当該年度は、H-P-O軸における“systemic BMP communication”の探索を進めた。視床下部GnRH・下垂体ゴナドトロピンの中枢軸とリズム調節因子およびペプチドによる制御に着目した。まず、FSH・LHの分泌調節におけるオレキシンとBMPシグナルの作用を検討した。オレキシンは中枢神経系での睡眠覚醒や摂食行動の調節が知られるが、その受容体は内分泌臓器を含む末梢組織にも発現し内分泌系の制御に広く影響する。マウス下垂体ゴナドトロープLβT2細胞を用いて、オレキシンが下垂体内分泌に与える影響をBMPと時計遺伝子との関連に着目して検討した。LβT2細胞にはオレキシン受容体OX1R/OX2Rの発現を認め、オレキシン刺激によりゴナドトロピン発現の上昇を認めた。一方で、GnRHの存在下においては、GnRH刺激により亢進したゴナドトロピンの発現がオレキシンにより抑制された。さらにGnRHは、OX1R/OX2Rの発現を増強させる一方で、オレキシンはGnRH受容体の発現を抑制したことから、オレキシンはGnRH受容体の発現を調整することによってGnRH刺激下のゴナドトロピン発現を制御している可能性が示唆された。オレキシンとGnRHはいずれも時計遺伝子Bmal1・Clock mRNAの発現を上昇した。オレキシン・BMPシグナルおよび時計遺伝子の関係について検討したところ、BMPによりOX1R/OX2Rの発現および時計遺伝子の発現の上昇を認め、一方でオレキシンはBMP受容体の発現増強を介して、BMP受容体シグナルを増強した。以上の結果より、オレキシンがGnRH作用および下垂体BMPと相互に影響しながら、時計遺伝子の発現を介して下垂体ゴナドトロピンを発現制御することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
現在までのところ、ほぼ予定通りの研究を進めることができている。前年度までの予定項目で、十分遂行できなかった事項については、次年度の計画とともに補足して遂行したいと考えている。
本研究では以下の骨子となる研究を遂行している:1)卵胞BMPシステムによる卵胞ステロイド合成および細胞増殖活性の調節とSmad制御因子の意義の検討、2)PCOS病態に関与する内分泌因子とBMPシステムの機能連関とその機序へのアプローチ、3)卵胞に発現する時計遺伝子・日内リズム調節因子とBMPシステムとの相互作用の解明、4)H-P-O軸における Systemic BMP communicationの探索、の4つである。前年度は、特に骨子4)に関連して、視床下部GnRH・下垂体ゴナドトロピンの中枢軸とリズム調節因子およびペプチドによる制御に着目して研究した。次年度は、この結果を踏まえて、神経内分泌系と生殖内分泌系を包括的に捉えて、2)3)のこれまでのデータとの整合性を考察し、生殖内分泌腺および性腺外内分泌腺を含めた、Systemic BMP communicationとしての生理的意義を証明したい。
試薬・消耗品購入における残額が少し生じたが、次年度以降の研究で使用予定となっている。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (19件) (うち査読あり 17件、 オープンアクセス 17件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件)
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