研究課題
前年度は、HPO軸における“systemic BMP communication”の探索を進め、オレキシンがGnRH作用および下垂体BMPと相互に影響し、時計遺伝子の発現を介して下垂体ゴナドトロピンを発現制御することを報告した。最終年度では、未だ十分に解明されていなかった下垂体後葉系と卵胞ステロイド調節系にアプローチした。オキシトシン(OXT)およびOXTと同じ後葉由来バソプレシン(AVP)の卵胞ステロイド合成への影響について研究を遂行した。OXTとAVPの卵胞ステロイド合成系への影響と卵胞BMPの関与を解明するため、ラット卵巣顆粒膜細胞初代培養系およびヒト卵巣顆粒膜細胞KGNを用いて検討した。AVPはOXT同様にラット及びヒト顆粒膜細胞において、FSH/ forskolin (FSK)刺激によるcAMP合成およびプロゲステロン合成酵素の発現を増強することにより、プロゲステロン合成を選択的に増加したが、エストロゲン合成には影響を与えなかった。AVPはBMP-15による顆粒膜細胞のSMAD1/5/9リン酸化を促すとともに、BMP受容体:ALK3・ALK6・BMPR2の発現を上昇し、抑制性SMAD7の発現を減弱した。つまり、AVPはOXTと同様に卵巣顆粒膜細胞においてBMP-15による制御を伴いながら、プロゲステロン合成を増幅することが示された。下垂体前葉ゴナドトロピンとともに下垂体後葉ホルモンもHPO系に影響することが明らかになった。研究期間全体を通じ、1)卵胞BMPシステムによる卵胞ステロイド合成調節とSmad制御因子の意義、2)PCOS病態に関与する内分泌因子とBMPシステムの機能連関、3)卵胞に発現する日内リズム調節因子とBMPシステムとの相互作用、4)HPO軸における Systemic BMP communicationの4つの視点から、一定の成果を得ることができた。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Int. J. Mol. Sci.
巻: 25(3) ページ: 1585
10.3390/ijms25031585
J. Psychosom. Obstet. Gynaecol.
巻: 45(1) ページ: 2305899
10.1080/0167482X.2024.2305899
Front. Endocrinol. (Lausanne)
巻: 15 ページ: 1381083
10.3389/fendo.2024.1381083
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 646 ページ: 103-109
10.1016/j.bbrc.2023.01.073.
巻: 667 ページ: 132-137
10.1016/j.bbrc.2023.05.058.
巻: 24(16) ページ: 12559
10.3390/ijms241612559.
Hypertens. Res.
巻: 46 ページ: 2551-2552
10.1038/s41440-023-01426-4.