研究実績の概要 |
本研究は肥満・糖尿病の病態における生体の恒常性維持機構の一つUnfolded Protein Response (UPR)機構とその主要制御因子IRE1αの役割を明らかにし、我々が新規開発しモデル動物にて糖尿病治療薬としての可能性を示したIRE1α特異的阻害薬KIRAの肥満・糖尿病に対する治療法の開発基盤を構築することを目的としている。初年度は当初予定通り、まず「肥満・糖尿病におけるIRE1α活性に着目したUPR制御機構の解明」を課題の問いとして設定し、「肥満・糖尿病モデルマウスにおいてIRE1α活性およびUPR制御がどの時期からどのように引き起こされるのか、病態制御のカギとなる因子は何なのか」を検証することとした。 当該年度は当初予定通り以下の検討を進めた。我々はNODマウスでは発症直前より適応型UPRであるAdaptive-UPRの上昇を認め、その後細胞死を導くTerminal-UPRへの変換が行われることを明らかにした。db/dbマウスでは6週ごろより体重増加と糖尿病の発症を認めることから、今回db/dbマウスの発症前である5週令より5, 7, 9週令にて膵島のUPR関連mRNA発現量の評価を時系列で行い、UPR変換が引き起こされるのか、また引き起こされるとすればどの時期なのか、を同定するべく検討を進めた。その結果、活性型IRE1αを唯一の酵素とする転写因子Xbp1 のmRNAのスプライシング反応によって引き起こされるspliced Xbp1のmRNA発現量がdb/db(ホモ)マウスではdb/+(ヘテロ)マウスに比し7-9週で増加傾向にあることが明らかとなった。
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