研究課題/領域番号 |
21K08562
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
森田 修平 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50372868)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス応答 |
研究実績の概要 |
本研究は肥満・糖尿病の病態における生体の恒常性維持機構の一つUnfolded Protein Response (UPR)機構とその主要制御因子IRE1αの役割を明らかにし、新規開発し、モデル動物にて糖尿病治療薬としての可能性を示したIRE1α特異的阻害薬KIRAの肥満・糖尿病に対する治療法の開発基盤を構築することを目的としている。本年度も当初予定通り、まず「肥満・糖尿病におけるIRE1α活性に着目したUPR制御機構の解明」を課題の問いとし、「肥満・糖尿病モデルマウスにおいてIRE1α活性およびUPR制御がどの時期からどのように引き起こされるのか、病態制御のカギとなる因子は何なのか」を検証することとした。 我々は1型糖尿病モデルマウスであるNODマウスにおいて発症直前より適応型UPRであるAdaptive-UPRの上昇を認め、その後細胞死を導くTerminal-UPRへの変換が行われることを明らかにした。今回db/dbマウスにおいても同様に発症前である5週令より5, 7, 9週令にて膵島のUPR関連mRNA発現量の評価を時系列で行い、UPR変換が引き起こされるのか、また引き起こされるとすればどの時期なのか、を同定するべく検討を進めた。前年度までの経過で、活性型IRE1αを唯一の酵素とする転写因子Xbp1 のmRNAのスプライシング反応によって引き起こされるspliced Xbp1の発現量はdb/db(ホモ)マウスではdb/+(ヘテロ)マウスに比し7-9週で約3-4倍増加傾向にあることを、まず明らかにした。当該年度は、ヒト膵β細胞株におけるUPR反応による関連因子の発現を網羅的解析から検討し、病態制御のカギとなりうる候補因子を数因子同定した。さらに、これら因子のdb/dbマウス単離膵島における発現量の経時的変化を、前年度のURP変換の経時的変化を利用して対応を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通り、UPR関連の病態制御候補因子を同定しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
膵島でのUPR反応とIRE1α活性により引き起こされる下流反応を検討し、IRE1α活性およびUPR制御によって病態を変化させる鍵となる候補因子の同定を単離膵島、ヒト膵β細胞株にて確認できたことから、今後これら因子の機能解析を進める。一方で、Vivoではこれらの因子のUPR反応に応じた経時的な発現は主として単離膵島により確認できたものの、膵β細胞特異性的な網羅的解析は行われていない。空間因子を考慮した膵β細胞特異性的な網羅的解析法が進展してきたことから、これらの手法を加味して同定因子を含めた病態制御因子の検証およびパスウェイ解析や、更なる因子の同定を行うことを考慮する。さらにNODマウスにて認められたKIRAの有効性につき肥満・糖尿病モデルマウスにおいて検討を行い、肥満・糖尿病におけるUPRおよびIRE1αの病態進展への役割の検証と治療の可能性につき検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度繰越費用を利用できたこと、マウスコロニーと使用マウス数の削減と関連薬剤使用量削減ができたこと、により 差額が生じた。今後、マウス膵島単離およびRNA、タンパク定量、局在同定費用として使用予定である。
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