●生活習慣病が腎尿細管を介して相互増悪する機序の解明(in vivo解析) 生活習慣病が腎尿細管におけるNa輸送体の機序にどのように影響を及ぼすかという点において、高血圧モデルを想定し、アルドステロンの持続皮下注射および高塩分食を用いた慢性生活習慣病モデルを作出した。実際に腎尿細管に発現する各種Na輸送体をウエスタンブロッティング法で確認したが、現時点では、各種Na輸送体群においては、明らかな優位差を持つほどの発現量の変化を同定するには至らなかった。一方で、我々の過去の報告では、発現量の変化がなくても個々のNa輸送蛋白の活性機能変化が生じる可能性が示唆されることから(Kidney Int 2015)、in vivo解析については機能活性変化法を交えたさらなる検索が必要と考えた。 ●腎Na輸送体NBCe1の新たな変異体の発見 腎尿細管の主要なNa輸送体であるNBCe1の変異体であるI551Fを今回の研究期間中に新たに発見・論文化した(Am J Physiol Renal Physiol 2021)ことから、新規の輸送活性低下型変異体について更に検索を加えた。その結果、現時点で新規に3か所に輸送活性型のミスセンス変異を同定している。特に一部の変異体については、2量体の形成障害や翻訳後修飾障害といった、既存の変異体報告には見られない新たな活性低下機序の可能性が考えられた。NBCe1の輸送活性低下の機序については、膜発現欠損型や膜発現量低下型など多彩であることが想定され、さらなる検索を加える予定である。
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