次世代シーケンス技術を駆使した日本人特有の新規１型糖尿病遺伝子の同定と機能解析

2023 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 21K08567
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 能宗 伸輔 近畿大学, 医学部, 准教授 (90460849)
• 研究分担者: 池上 博司 近畿大学, 医学部, 教授 (20221062) ; 馬場谷 成 近畿大学, 医学部, 講師 (10449837) ; 廣峰 義久 近畿大学, 医学部, 講師 (30460851)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: １型糖尿病 / 遺伝子解析 / 次世代シーケンス / 濃厚発症家系

研究実績の概要

１型糖尿病は多因子疾患（common disease）であり、その遺伝素因は効果量の小さい疾患感受性遺伝子が多数集積して校正される。しかし我が国の１型糖尿病は欧米に比し有病率が低く、また家族内集積率は高い傾向がある。本研究は有病率が高い欧米と本邦における疫学的特徴の差異に着目し、Common diseaseの発症に関わるありふれた変異（common variant）とは別に、頻度は低いが効果量の大きい新規Rare varinatを見いだすことにより、我が国特有の遺伝素因を分子レベルで解明することを目的としている。寄与率の低いCommon variantの同定には大規模サンプルを集積する必要があるが有病率が低い我が国では困難である。一方で一家系に複数の１型糖尿病発症者を有する家系を対象とすると、大きな効果量をもつrare variantを同定できる可能性がある。我々はこれまで着実に濃厚発症家系の集積を進めており、昨年度時点で15家系54名（罹患者35名、非罹患者19名）であった対象者は、17家系62名（罹患者40名、非罹患者22名）となった。対象者の全エクソームシーケンス（WES）作業をは完了し、初年度に独立基盤形成支援にともなう交付決定後増額を得たことにより各家系の発端者に対して全ゲノムシーケンス（WGS）をおこなうことで、WESだけでは検出し得ない、染色体上の大きな構造変異の探索やミスアライメントの検証など変異解析の精度を飛躍的に向上させることができた。
現状、次世代シーケンス解析によって同定された遺伝子変異が偽陽性である可能性を除外するため、サンガー法を用いたDirect sequencing、およびにTaqman法を用いて遺伝子型を決定する作業をおこなっており、また家族性１型糖尿病と弧発例１型糖尿病におけるＨＬＡハプロタイプの差異については論文執筆中である。

研究成果

• [雑誌論文] New diagnostic criteria (2023) for slowly progressive type 1 diabetes (SPIDDM): Report from Committee on Type 1 Diabetes in Japan Diabetes Society (English version) (2024)
  • 著者名/発表者名: Shimada A, Kawasaki E, Abiru N, Awata T, Oikawa Y, Osawa H, Kajio H, Kozawa J, Takahashi K, Chujo D, Noso S, Fukui T, Miura J, Yasuda K, Yasuda H, Imagawa A, Ikegami H.
  • 雑誌名: J Diabetes Investig. 巻: 15 ページ: 254-257
  • DOI: 10.1007/s13340-023-00679-1.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Glucose values from the same continuous glucose monitoring sensor significantly differ among readers with different generations of algorithm (2024)
  • 著者名/発表者名: Babaya N, Noso S, Hiromine Y, Taketomo Y, Niwano F, Yoshida S, Yasutake S, Kawabata Y, Maeda N, Ikegami H.
  • 雑誌名: Sci Rep. 巻: 14 ページ: 5099
  • DOI: 10.1038/s41598-024-55124-3.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Prediction of future insulin-deficiency in glutamic acid decarboxylase autoantibody enzyme-linked immunosorbent assay-positive patients with slowly-progressive type 1 diabetes (2024)
  • 著者名/発表者名: Kawasaki E, Awata T, Ikegami H, Imagawa A, Oikawa Y, Osawa H, Katsuki T, Kanatsuna N, Kawamura R, Kozawa J, Kodani N, Kobayashi T, Shimada A, Shimoda M, Takahashi K, Chujo D, Tsujimoto T, Tsuchiya K, Terakawa A, Terasaki J, Nagasawa K, Noso S, Fukui T, Horie I, Yasuda K, Yasuda H, Yanai H, Hanafusa T, Kajio H
  • 雑誌名: J Diabetes Investig. 巻: 15 ページ: online
  • DOI: 10.1111/jdi.14178.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Metabolic signatures of β-cell destruction in type 1 diabetes (2023)
  • 著者名/発表者名: Noso S, Babaya N, Hiromine Y, Taketomo Y, Niwano F, Yoshida S, Ikegami H.
  • 雑誌名: J Diabetes Investig. 巻: 14 ページ: 48-57
  • DOI: 10.1111/jdi.13926.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Glycemic Excursion and Insulin Action Revealed in a Rare Case of Type 1 Diabetes Complicated with Short Bowel Syndrome (2023)
  • 著者名/発表者名: Hiromine Y, Noso S, Babaya N, Taketomo Y, Niwano F, Okuda Y, Yasutake S, Minohara T, Tsuda N, Hama Y, Ikegami H.
  • 雑誌名: Intern Med. 巻: 107 ページ: 1023-1029
  • DOI: 10.2169/internalmedicine.0287-22.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] シンポジウム5．1型糖尿病の最前線「我が国おける１型糖尿病の遺伝素因」 (2023)
  • 著者名/発表者名: 能宗伸輔、池上博司
  • 学会等名: 第66回日本糖尿病学会年次学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] ハーゲドーン賞受賞講演「１型糖尿病に関する分子遺伝学的研究」 (2023)
  • 著者名/発表者名: 池上博司
  • 学会等名: 第66回日本糖尿病学会年次学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] シンポジウム5：１型糖尿病の最前線「日本糖尿病学会における１型糖尿病の臨床研究－レジストリ研究と免疫チェックポイント阻害薬による１型糖尿病研究について」 (2023)
  • 著者名/発表者名: 今川彰久、島田朗、池上博司
  • 学会等名: 第66回日本糖尿病学会年次学術集会
  • 招待講演
• [学会発表] リサーチシンポジウム：１型糖尿病の病態up-to-date (2023)
  • 著者名/発表者名: 能宗伸輔、武友保憲、池上博司
  • 学会等名: 第22回日本先進糖尿病治療・1型糖尿病研究会「１型糖尿病の発症・進展に関わる遺伝素因」
  • 招待講演