研究実績の概要 |
【最終年度の成果】 マウスACTH産生下垂体腫瘍細胞株において、guide RNAを既知のPomcのプロモーター(Prom)、あるいはその7 kb上流の既知のエンハンサー(Enh)領域に設定のうえ、遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法(enChIP)を施行し、それぞれが物理的に相互作用していることを確認した。enChIPシークエンスでは、PomcのProm、あるいは-7 kb Enhと相互作用しているゲノム領域が約24,000か所抽出された。前年に施行したCap analysis of gene expression (CAGE)で確認できた約12,000か所のde novo Enh候補領域とenChIPシークエンスのピークがオーバーラップしている領域の中で、PomcのProm/-7kb Enhと相互作用している領域を自身のPromとして使用している遺伝子がいくつか検出された。この遺伝子についてsiRNAを用いてknockdownしたところ、Pomc遺伝子発現を正、あるいは負に制御する新たな因子であることが確認された。 【研究機関全体の成果】 活性化Enhのマーカーと考えられているMediator complexのクロマチン免疫沈降シークエンスのdataと、CAGEから得られたdataには乖離が生じており、Pomc遺伝子転写調節にはMediator complexの誘導に依存する部分、しない部分があることが確認された。CAGEとenChIPの組み合わせによってPomc遺伝子発現の新たな調節領域を同定し、ホルモン投与によるCAGEシグナルの変化、あるいはenChIPでの高次構造の変化を評価することで、ホルモン依存性のPomc遺伝子調節領域の検索を可能とする新たなシステムを開発した。ヒトACTH産生腫瘍細胞のPomc発現調節に関与する因子の検索についても応用が可能となった。
|