日本では加齢に伴い疾患が生じ,また健康状態が自然に悪化するという先入観が強い。しかし,それはすべての身体機能において証明されているわけではない。本研究において我々は,2型糖尿病の病態生理の本体であるインスリン抵抗性は,少なくともマウスにおいては,中年では悪化するものの老年期において自然に回復することを証明した。振り返って臨床の現場でも,中年期に発症した2型糖尿病が老年期に悪化してゆく患者は必ずしも多くない。ヒトにおいてもある年齢を過ぎると,加齢そのものが体重や肥満度とは無関係にインスリンの感受性を回復させる可能性を持つことが推測され,その仕組みを見出すことで創薬の手掛かりとなる可能性を持つ。
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