研究課題/領域番号 |
21K08575
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井上 真由美 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (80512079)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 代謝 / 細胞外マトリックス / ヒト / 肥満 / 脂肪 |
研究実績の概要 |
我々は、細胞外マトリックスが単なる臓器の形態を支える無機質な構造物ではなく、それ自身が細胞にさまざまな作用を及ぼすアクティブな器官であることを提唱してきた。具体的には、細胞外マトリックスが脂肪細胞のミトコンドリア呼吸、脂肪組織の炎症あるいは血管新生の抑制を介して肥満や耐糖能異常にかかわることを、動物モデルを用いて明らかにしてきた。本研究では、ヒトの肥満やそれに付随するさまざまな疾患における細胞外マトリックスの意義を明らかにすることによって、細胞外マトリックスをターゲットとした肥満および糖尿病の新たな予防・治療方法を開発することを目的としている。我々は京都大学医学部附属病院先制医療・生活習慣病研究センターの検診受診者の検診結果のデータベースを構築し、様々なパラメーターを用いた臨床研究を行える体制を構築した。また、同意を得られた受診者から採取した血液検体を用い、血中細胞外マトリックス濃度を測定してきた。これまで、いくつかの代謝関連パラメーターと細胞外マトリックスの相関を見出しているが、パラメーターによってはマウスで見られたような強力な関連はヒトでは見出しにくいということも明らかになってきた。ところが、我々の施設の検診受診者は毎年検診を受診している者が多く、コホートスタディを行える体制を整えているので、これらの受診者の経年的代謝パラメーターの変化を追跡していくと、マウスで見られたような傾向がより見やすい可能性も出てきている。つまり、マウスに比べてヒトは寿命が長いことから、細胞外マトリックスのような細胞の環境として比較的静かな刺激を与えるような物質の影響の検出を可能にするには、ヒトではマウスなどのモデル動物よりも時間がかかる可能性が示唆される。このことは細胞外マトリックス分野の研究において非常に重要な知見であり、本研究のような条件下ではじめて明らかにすることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験計画の想定とは異なった結果がみられたため
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今後の研究の推進方策 |
ヒトにおける細胞外マトリックスと代謝パラメーターとの関連について、横断的にはその関連を見出しにくい因子に関しても、経年的にデータを収集することにより、よりその関連性を見出せるケースも見られることから、今後データを蓄積してコホート研究を進めることにより、細胞外マトリックスと老化に関連した代謝の変化について意義を見出せる可能性が出てきた。 また、脂肪組織や肥満に関してのみではなく、全身の幅広い臓器における細胞外マトリックスの意義について探求していくこととする。 今後はそのような今後の研究につなげる橋渡し的なデータ収集も行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
プロジェクトに遅れがあるため
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