研究課題
代表者はこれまでに、膵β細胞におけるインスリンシグナルの研究を行ってきた。膵β細胞特異的にTsc2を欠損させたマウス(βTSC2KO)では、若齢期において膵β細胞量増大、低血糖を示すものの、高齢期になると膵β細胞量減少、高血糖を呈することを報告している。膵β細胞量減少の機序として、これまでに増殖能低下、アポトーシス亢進が重要であることを明らかにしてきたが、近年、膵β細胞の可塑性に注目が集まっており、βTSC2KOにおいても影響している可能性を考慮して本研究を開始した。βTSC2KOの膵島では、若齢期から腺房細胞マーカーであるPtf1aが発現しており、高齢期になるとアミラーゼ陽性細胞が多数認められるようになった。これらの由来を確認すべく、lineage-tracingを検討したところ、膵β細胞由来マーカーであるYFPとアミラーゼの共陽性細胞が確認された。これらの結果より、mTORC1活性亢進が膵β細胞の可塑性に影響することで、腺房細胞に分化転換している可能性が考えられた。さらにこの現象の普遍性を確認すべく、db/dbマウスにRosa26-YFPマウスを交配し、lineage-tracing解析を行った。その結果、db/dbマウスでも膵島内において膵β細胞由来アミラーゼ陽性細胞が存在することが明らかとなった。これは、db/dbマウスの膵β細胞においてmTORC1活性が亢進していることによるものと考えられる。mTORC1活性阻害剤であるラパマイシンを投与したところ、Ptf1aの発現が消失したことから、やはりmTORC1活性が本現象に関与していると考えられる。これらの結果より、膵β細胞におけるmTORC1活性亢進が分化転換に影響しているものと考えられた。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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