研究課題/領域番号 |
21K08580
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山本屋 武 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (50760013)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 糖・脂質代謝 / 脂肪細胞 / 脂肪肝 / 細胞内小胞輸送 / 神経変性疾患 / 神経筋接合部 |
研究実績の概要 |
Trk-fused gene (TFG) は小胞体からGolgi体へのCOPII小胞輸送に重要な役割を担うこと、またその遺伝子異常がALS類似疾患である近位筋優位遺伝性運動感覚ニューロパチー (HMSN-P) などいくつかの神経変性疾患の原因となることが近年明らかとなってきた蛋白である。我々は各臓器特異的TFG KOマウスを作製し、TFGの代謝制御における役割やTFG遺伝子異常が原因となる神経変性疾患の発症機序を明らかにすることを目的に研究を進めている。 2021年度は、運動神経において後天的にTFGを欠失させることで神経筋接合部 (NMJ) のdenervationが生じること、また骨格筋のTFGがNMJの維持に寄与している可能性を明らかにし、論文報告することができた (Yamamotoya T, et al. Sci Rep. 2022)。骨格筋のTFGは加齢によっても発現量が減少するため、加齢に伴うNMJの機能低下にもTFGが関与している可能性が示唆された。 TFGの代謝制御における機能については、脂肪細胞のTFG欠失によりPPARγ標的遺伝子の発現が低下する機序と、肝細胞特異的TFG KOマウスで肝脂肪蓄積が生じる機序につき、検討を続けており、後者については絶食時のPPARα標的遺伝子の誘導がKOで顕著に障害されていることがこれまでに明らかとなった。詳細な機序の解明を目指し、引き続き検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運動神経特異的TFG KOマウスの解析結果について、論文という形でまとめることができた点は成果として大きい。 また肝細胞におけるTFGの役割についても絶食時のPPARα活性との関連が明らかとなり、糸口がつかめつつある。 しかし脂肪細胞においてPPARγ活性をどのようにTFGが制御しているかについては、決定的な分子メカニズムが同定できておらず、依然として難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪細胞について、TFG欠失からPPARγ活性の低下までに時間を要するため、直接的な分子相互作用よりは、何らかの細胞内環境変化を介した二次的な影響を見ている可能性が高いと推察している。またin vivoとin vitroでもTFG欠失による影響に乖離があり、神経シグナルなどを介する可能性のほか、細胞サイズの違いが影響している可能性を考えている。今年度はTFGの脂肪細胞における機能解析に注力し、早期の論文化を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染流行の影響で、学会が全てオンラインとなり、旅費を節約することができた。脂肪細胞についての検討がやや長引いており、それに要する実験費用(消耗品)に充填し、早期の論文化を目指したい。
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