研究課題
Trk-fused gene (TFG) は小胞体からGolgi体へのCOPII小胞輸送に重要であること、またその遺伝子異常がいくつかの神経変性疾患の原因となることが、近年明らかとなってきた分子である。我々はTFGの代謝制御における役割に着目し、各臓器特異的TFG KOマウスの表現型解析を介して、代謝関連臓器におけるTFGの機能解明を試みており、これまでに膵β細胞の増殖およびインスリン分泌における重要性 (Sci Rep. 2017) や、骨格筋TFGが神経筋接合部の形成・維持に寄与する可能性 (Sci Rep. 2022) について報告してきた。2022年度は脂肪組織および肝臓におけるTFGの機能の検討を行った。TFG floxedマウス皮下脂肪よりSVF (stromal vascular fraction) を単離し、Cre発現アデノ随伴ウイルスベクターを用いてTFGを欠失させると、脂肪細胞への分化が抑制されることから、TFGはadipogenesisに重要な役割を担っていることが示唆される。雄マウスでは高脂肪食負荷時に精巣上体周囲脂肪 (epiWAT) 特異的にadipogenesisによる脂肪細胞数の増加を介した脂肪組織の増大 (hyperplasia) が生じることが知られているが、高脂肪食負荷早期の時期に脂肪細胞においてTFGを欠失させると、epiWAT増大が有意に抑制され、おそらくadipogenesisの障害に起因するものと考えている。肝臓でTFGを欠失させると絶食時の肝脂肪蓄積が増加するが、その機序として絶食時にその発現・活性が上昇する転写因子Xの発現量制御を介する可能性を示唆する結果が得られてきている。Xの発現増加が障害される分子メカニズムについて、現在検討を進めている。
2: おおむね順調に進展している
脂肪細胞においてTFGがPPARγ標的遺伝子や脂肪酸合成関連遺伝子の発現を制御するメカニズムの解明に難渋していたが、細胞自律的 (cell-autonomous) ではなく、in vivoでのみ機能する神経シグナル・液性因子の作用が介在していることを示すデータが得られてきており、解明に向け展望が開けつつある。
脂肪細胞に関しては現在着目している上記因子の関与が明らかにできれば、速やかに論文にまとめる予定である。
新型コロナ流行に伴い学会参加など研究活動に制約が生じた2021年度からの繰り越しが多くあったため、2022年度は精力的に研究を行ったものの、残金が生じた。2023年度は学会参加含め、引き続き精力的に研究を遂行していくのに加え、脂肪細胞についての論文化に際し、出費が見込まれるため、2023年度請求分と合わせて効率的に使用していく予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)
J Dermatol.
巻: 50 ページ: 462-471
10.1111/1346-8138.16633
Front Cell Dev Biol.
巻: 10 ページ: 1005325
10.3389/fcell.2022.1005325
Cancer Med.
巻: - ページ: -
10.1002/cam4.5587
Exp Cell Res.
巻: 425 ページ: 113544
10.1016/j.yexcr.2023.113544