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2021 年度 実施状況報告書

腸管内分泌細胞の発生・発達に対する短鎖脂肪酸の意義の検討

研究課題

研究課題/領域番号 21K08584
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

入江 潤一郎  慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (70306687)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード腸管ホルモン
研究実績の概要

肥満症や糖尿病の治療戦略として、インクレチンに代表される腸管ホルモンが重要な役割を担っているが、その産生の個人差を規定する因子は明らかではない。我々は、妊娠中に胎児が母体から暴露される、腸内細菌によって産生される短鎖脂肪酸が、胎児の腸管内分泌細胞の発達と成獣期の腸管ホルモン分泌能を決定することを報告した。さらにこの発生の差異が成獣期の肥満症・糖尿病発症に大きな影響を与えることを見出した。すなわち、妊娠母体からの短鎖脂肪酸供給が、仔の将来の肥満症・糖尿病発症を決定することが示唆されるが、その発生過程における短鎖脂肪酸の役割は必ずしも明らかでない。そこで妊娠マウスに対して無菌化を施し、妊娠期間中にプロピオン酸、酢酸などを経口投与し妊孕性と出生仔に与える影響を評価した。妊娠C57BL/6Jマウスに短鎖脂肪酸(プロピオン酸、酢酸など)を妊娠期間中に経口投与し、出生仔数とその後の仔の成育について体重、糖代謝能などを評価した。妊娠中の無菌化により得られる仔の数が減じ、また出生体重は低値となった。さらに無菌化により出産頻度も低下傾向となり、妊孕性の低下が考えられた。1回の妊娠出産で得られる仔の数に関しては、短鎖脂肪酸の投与によって明らかな差異を認めなかったが、出生体重は高値の傾向を認めた。その仔の成長に関しては、対照マウスに比較して短鎖脂肪酸投与マウスでは体重増加の抑制傾向が認められた。しかし血糖値、腸管長や腸管バリア機能、インクレチン関連遺伝子発現については、明らかな差は観察されなかった。また短鎖脂肪酸の妊娠期間中の投与期間の違いは、出生仔の数や仔の成長には明らかな影響を与えなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

妊娠マウスの無菌化により仔の成育が抑制され、また短鎖脂肪酸の経口投与により仔の成長後の糖エネルギー代謝異常症の発症が抑制される傾向が確認されていることから、本検討系と介入自体は当初の予定通り進められていると考えている。初年度の検討はほぼ完了しているが、検討数が十分得られないという事象が生じている。その原因の一つとして、妊娠マウスへの様々な介入により、得られる仔の数の低下、出産頻度の低下が認められていることから、妊孕性の低下が生じていると推測している。

今後の研究の推進方策

母体への介入ののち得られた仔について、腸管の詳細な検討を、特に腸管内分泌細胞数、インクレチン関連遺伝子発現、ex vivo腸管培養液中の腸管ホルモン分泌測定により行う。さらに出生仔に脂肪含有量の異なる食事負荷を約3か月間行い、定期的に糖負荷検査、脂質プロファイル測定を行い、体脂肪蓄積、耐糖能、インスリン分泌、腸管ホルモン分泌を検討する。測定する腸管ホルモンとしては、GLP-1、GIP、PYYなどを測定する。また昨年度の検討では、妊娠マウスへの様々な介入により、得られる仔の数の低下、出産頻度の低下が生じたと考えられた。より低侵襲な介入と、十分な仔を得る妊娠マウスの準備により、これらの問題を解決し本年度の検討を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

母マウスの出産が十分ではなく、一部の仔の検討を次年度に行うことにしたため。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Intestinal Epithelial NAD+ Biosynthesis Regulates GLP-1 Production and Postprandial Glucose Metabolism in Mice2022

    • 著者名/発表者名
      Nagahisa Taichi、Yamaguchi Shintaro、Kosugi Shotaro、Homma Koichiro、Miyashita Kazutoshi、Irie Junichiro、Yoshino Jun、Itoh Hiroshi
    • 雑誌名

      Endocrinology

      巻: 163 ページ: -

    • DOI

      10.1210/endocr/bqac023

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Newly developed type 1 diabetes after coronavirus disease 2019 vaccination: A case report2022

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Hironobu、Itoh Arata、Watanabe Yasuhiro、Nakajima Yuya、Saisho Yoshifumi、Irie Junichiro、Meguro Shu、Itoh Hiroshi
    • 雑誌名

      Journal of Diabetes Investigation

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1111/jdi.13757

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 糖尿病における腸内細菌とその治療応用2022

    • 著者名/発表者名
      大友佑介,入江潤一郎
    • 雑誌名

      糖尿病・内分泌代謝科

      巻: 54 ページ: 207-214

  • [雑誌論文] 腸内環境と糖尿病2022

    • 著者名/発表者名
      菊地理恵子, 入江潤一郎
    • 雑誌名

      月刊糖尿病

      巻: 14 ページ: 74~81

  • [雑誌論文] Novel bile acid biosynthetic pathways are enriched in the microbiome of centenarians2021

    • 著者名/発表者名
      Sato Yuko、Atarashi Koji、..... Irie Junichiro、Itoh Hiroshi、.....Inoue Takashi、Honda Akira、Hattori Masahira、Murai Tsuyoshi、Xavier Ramnik J.、Hirose Nobuyoshi、Honda Kenya
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 599 ページ: 458~464

    • DOI

      10.1038/s41586-021-03832-5

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Circadian Clock, Sleep, and Diet2021

    • 著者名/発表者名
      Irie Junichiro
    • 雑誌名

      intechopen

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.5772/intechopen.100421

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 肥満・やせと腸内細菌2021

    • 著者名/発表者名
      入江潤一郎, 伊藤裕
    • 雑誌名

      老年内科

      巻: 4 ページ: 531~538

  • [雑誌論文] 腸内環境と睡眠2021

    • 著者名/発表者名
      入江潤一郎
    • 雑誌名

      睡眠医療

      巻: 15 ページ: 477~482

  • [雑誌論文] 腸内細菌叢と睡眠 生活習慣・腸内環境と睡眠の相互作用2021

    • 著者名/発表者名
      中島裕也, 入江潤一郎, 伊藤裕
    • 雑誌名

      Progress in Medicine

      巻: 41 ページ: 1201~1206

  • [学会発表] 糖尿病・メタボリックシンドロームにおける腸内細菌2022

    • 著者名/発表者名
      入江潤一郎, 伊藤裕
    • 学会等名
      第56回糖尿病学の進歩
    • 招待講演
  • [学会発表] 食由来腸内細菌代謝物の脂肪酸受容体を介したエネルギー代謝調節2022

    • 著者名/発表者名
      宮本潤基, 入江潤一郎, 伊藤裕, 木村郁夫
    • 学会等名
      第42回日本肥満学会学術集会
  • [学会発表] 肥満2型糖尿病患者への妊娠を視野に入れた糖尿病教育・治療の難しさを痛感した1例2021

    • 著者名/発表者名
      山口慎太郎, 三石正憲, 中島裕也, 伊藤新, 税所芳史, 入江潤一郎, 田中正巳, 目黒周, 伊藤裕
    • 学会等名
      第64回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 2型糖尿病様の病態を示したMODY3の1例2021

    • 著者名/発表者名
      茂木源治, 中島裕也, 稲石淳, 市橋洋輔, 伊藤新, 税所芳史, 入江潤一郎, 目黒周, 石井智弘, 田中正巳, 伊藤裕
    • 学会等名
      第64回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [学会発表] 術後のSGLT2阻害薬内服再開を契機に発症した糖尿病性ケトアシドーシスの1例2021

    • 著者名/発表者名
      岩原彰秀, 伊藤新, 杉山和俊, 税所芳史, 中島裕也, 入江潤一郎, 目黒周, 田中正巳, 伊藤裕
    • 学会等名
      第64回日本糖尿病学会年次学術集会
  • [備考] 慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 免疫腸管代謝グループ

    • URL

      https://keio-emn.jp/research/group6/

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公開日: 2022-12-28  

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