研究課題
肝血管内皮細胞に発現する細胞内プロテアーゼ、カルパインとこれにより遊離する分枝アミノ酸(BCAA)の非アルコール性脂肪性肝障害(NAFLD)における役割を検討した。培養血管内皮細胞(EC)を高グルコースに曝露するとカルパインが活性化されアミノ酸が遊離した。肝細胞内アミノ酸レベルはmTORC1によって検知されS6Kをリン酸化して脂肪新生が促進される。ECをアミノ酸不含培地で培養し、カルシウムイオノフォアでアミノ酸を遊離させて条件培地とした。条件培地を肝細胞株HepG2に負荷してインスリンで刺激したところSK6のリン酸化を認めたが、アミノ酸不含培地ではリン酸化を認めなかった。条件培地を負荷したHepG2にオレイン酸を負荷すると脂肪滴が形成され、mTORC1阻害剤ラパマイシンやアミノ酸トランスポーターLAT1阻害剤JPH203により、SK6リン酸化や脂肪滴形成が抑制した。野生型マウス(WT)に高脂肪食を負荷すると、肝血管内皮細胞のカルパイン発現が誘導され、肝臓の中性脂肪(TG)蓄積を誘導した。血管内皮細胞のカルパインをノックアウト(KO)したところ、TG蓄積が抑制された。KOマウスの肝臓のBCAA含有量はWTに比し有意に低下していた。WT由来培養肝ECを高グルコースで刺激するとアミノ酸遊離が増加したが、KO由来細胞ではでは全く増加しなかった。高脂肪食負荷WTにLPH203を投与すると、肝臓のTG蓄積が抑制された。高脂肪食負荷WTでは肝臓の脂肪蓄積促進因子であるSREBP1とその活性化因子であるS6キナーゼが活性化されたが、KOマウスでは抑制された。以上より、高グルーコースや脂肪食負荷により、肝血管内皮細胞のカルパインが活性化されてBCAA遊離が増加し、肝細胞に取り込まれたBCAAがS6キナーゼ、SREBP1を活性化し脂肪蓄積が促進されることが示された。
すべて 2023
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Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology
巻: 43 ページ: e66-e82
10.1161/ATVBAHA.122.317781