研究課題/領域番号 |
21K08590
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
菊地 晶裕 生理学研究所, 生体機能調節研究領域, 特任助教 (90321752)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 1型糖尿病 / マイオカイン / アディポカイン / 臓器間ネットワーク / シングルセル解析 |
研究実績の概要 |
近年、インスリン使用に伴う副作用の発現を低減させる1型糖尿病の新規治療法が求められている。代表者らは先にストレプトゾドシンを投与した1型糖尿病モデルマウスの解析結果から、モデルマウスで見られたマイオカイン(液性因子)の分泌異常を改善することが出来れば、臓器間ネットワークを介したインスリン非依存的な代謝調節メカニズムが修復し、血糖コントロールに必要なインスリン使用量を減少させることが可能であると仮説を立てた。そこで本研究はマイオカインの分泌異常を改善させることで実際に代謝異常も改善することを明らかにし、新規治療法の開発に貢献することを目指している。 1型糖尿病モデルマウスでマイオカインの分泌異常が惹起されるメカニズムを解明するため、末梢組織におけるエネルギー代謝調節の中枢である視床下部に着目し、昨年度、視床下部室傍核のシングル核RNA-seqを行った。本年度もその解析を進めたところ、室傍核に存在するCRHニューロンは大きく4つのサブタイプに分類できることが明らかとなった。そのうちの2つのサブタイプは神経ペプチドの発現が特徴となっており、AvpやTrhなどを発現するグルタミン酸ニューロン、および、CckやNtsなどを発現するGABAニューロンであった。また、室傍核の非CRHニューロンは大きく3つのサブタイプに分類できることが明らかとなり、そのうちの2つはCRHニューロンと同様、AvpやTrhなどを発現するグルタミン酸ニューロン、および、VipやNtsなどを発現するGABAニューロンであった。さらに、これらのサブタイプにはいくつかの液性因子受容体も高発現しており、液性因子を介した制御に関与することが考えられる。そのため、これらのサブタイプにおける遺伝子発現プロファイル変化がマイオカインの分泌異常を惹起する可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験に必要なトランスジェニックマウスの交配率が低く、必要な匹数を確保することが困難であったため。現在、エンリッチメントの導入などにより改善傾向にある。
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今後の研究の推進方策 |
1型糖尿病モデルマウスで見られるマイオカインの分泌異常を改善させる(過剰に対しては中和抗体の投与、不足に対しては補充)ことにより、代謝異常も改善し、血糖コントロールに必要なインスリン使用量も減少させることが可能であること定量的に明らかする。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスジェニックマウスの交配率が低く、今年度は必要な匹数を確保することが出来なかった。そのため、マウス飼育費の一部が未使用となった。次年度は当初の計画よりも多くのマウスが必要となるため、次年度のマウス飼育費として用いる予定である。
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