1型糖尿病は内因性インスリンが不足することで発症するため、治療法はインスリンの補充となる。しかし、インスリン補充による血糖コントロールは必ずしも容易ではなく、また、長期のインスリン投与は高血圧や腎障害などの合併症を引き起こす場合もある。そのため、インスリンの使用量を減らし、かつ、安定した血糖コントロールが可能となる新規な治療法が求められている。代表者らは先にストレプトゾドシンを投与した1型糖尿病モデルマウス(STZ糖尿病マウス)の解析を行い、STZ糖尿病マウスの代謝異常はインスリンの枯渇だけではなく、IL-6などのマイオカイン(液性因子)の異常分泌にも起因していることを見出した。そこで、マイオカインの分泌異常を改善することができれば、臓器間ネットワークを介したインスリン非依存的な代謝調節メカニズムが修復し、その結果、血糖コントロールに必要なインスリン使用量を減少させることが可能であると仮説を立てた。 本年度は本研究ですでに確立した高血糖を呈するSTZ糖尿病マウスにインスリンを単独で投与、または、インスリンとIL-6中和抗体を併用して投与し、それらの2群の血糖値を比較した。その結果、単独投与群では血糖値の変化幅が大きく不安定であったが、併用投与群では変化幅が小さく、血糖値は安定していた。さらに、1型糖尿病患者においても血糖コントロールに必要な1日のインスリン使用量が多い患者ほどIL-6の血中濃度が高いことを示唆する解析結果も得られた。これらの結果は、ヒトにおいてもインスリンとIL-6中和抗体などを併用するとインスリン単独投与よりも血糖コントロールがより安定する可能性を示唆している。 また、本年度も視床下部ニューロンのシングル核RNA-seq解析を引き続き行なった。
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