研究課題/領域番号 |
21K08591
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
稲垣 明子 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20360224)
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研究分担者 |
後藤 昌史 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50400453)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 膵島移植 / 細胞移植 / 皮下移植 / 1型糖尿病 / スキャホールド |
研究実績の概要 |
糖尿病に対する細胞移植療法である膵島移植では、門脈内への移植が現行の世界標準である。しかし、出血や門脈塞栓などの手術合併症が避けられず、移植後の移植グラフトの摘出が困難であるといった問題があり、理想的な移植部位ではない。一方、皮下は低侵襲で、手技が極めて容易であり、グラフト摘出も容易であるため、膵島移植にとって理想的な移植部位である。しかし、乏血管性が原因で、他の部位と比べて移植成績が著しく不良であり、臨床応用可能な皮下膵島生着プロトコールの構築が強く求められている。そこで、我々は不織布構造ゼラチン基材(gelatin hydrogel nonwoven fabric; GHNF)を移植予定箇所の皮下に前留置する、皮下膵島移植のための安全で効果的な膵島生着プロトコールの確立を目的とした。2021年度は、GHNFの前留置期間によって膵島生着に対する効果が異なることが予想されため、至適留置期間の至適化試みた。C57BL/6マウスの移植予定箇所の背部皮下にGHNFを留置し、2、4、6、8週後にC57BL/6マウス膵島を移植した。レシピエントマウスは移植7日前にストレプトゾトシンを投与して糖尿病を誘発した。その結果、前留置期間6週間が最も血糖コントロールが良好であることが判明した。なお、全て留置期間において浸出液の貯留や出血といった所見は見られなかった。至適留置期間が6週であることが判明したため、続いて、前留置6週間における、移植膵島量とその治癒率を調べた。その結果300 IEQsでは83%(5/6匹)、200 IEQsでは60%(3/5日匹)、100 IEQsでは0%(0/4匹)の治癒率であった。今年度の検証によりGHNFは皮下膵島移植の生着環境を誘導するデバイスである可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、皮下膵島移植におけるGHNFの前留置期間の至適化を行い、GHNFの至適前留置期間における糖尿病治癒に必要な膵島量を検証するという、2つの項目を設定し研究を推進してきた。いずれの検証も当初の計画通りに進み、前者では、GHNFの前留置期間によって移植成績が異なり、GHNFの至適な前留置期間を明らかにすることができた。後者においては GHMF 移植予定箇所皮下に至適期間留置することで、少ない量の膵島で糖尿病マウスが治癒することが 判明した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、マウスモデルでGHNFの前留置後に皮下組織に発現している因子の解明を目的に、免疫染色(新生血管マーカー、細胞外マトリックス、細胞接着因子)や発現遺伝子の解析(増殖因子、サイトカイン、細胞外マトリックス)実施予定である。また、GHNF留置部の皮下血管網を評価するために、CT血管造影を行う。また、ラットモデルで、GHNFの前留置期間の至適化と必要グラフト量の検証を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率よく実験を進めることができ、当初の計画より使用する動物の数が少なく、また動物実験で使用する試薬や血糖測定用のチップ等の購入費も予定より少なかったため次年度使用額が生じた。 使用計画としては、動物購入費用、免疫染色用抗体、CT造影剤、遺伝子解析用試薬の購入費用に充てる。また申請課題の内容に合致する研究発表および情報収集の為の学会出席や論文投稿に係る経費に使用予定である。
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