研究課題/領域番号 |
21K08595
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
柏原 秀也 徳島大学, 病院, 特任准教授 (10548738)
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研究分担者 |
徳永 卓哉 徳島大学, 病院, 助教 (30448328)
西 正暁 徳島大学, 病院, 助教 (70464344)
高須 千絵 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (70582823)
吉川 幸造 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任教授 (80448331)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Bariatric surgeery / gut microbiota / インスリン抵抗性 / NASH / 炎症性サイトカイン / 腸管透過性 |
研究実績の概要 |
Bariatric surgeryには減量や耐糖能改善効果のほか、癌の発生率も低いことが報告されている。本研究ではBariatric surgeryであるDuodenal jejunal bypass(DJB)を施行した肥満糖尿病ラットを用いて腸内細菌叢microbiome・胆汁酸の変化、肝・脂肪・腸管炎症、腸管透過性に着目し、Bariatric surgeryによるインスリン抵抗性・NASH改善、肝発癌抑制効果を検討した。<方法>(1:発癌誘導剤を用いない検討)肥満・糖尿病ラットをDJB群 (D群)、開腹のみSham群 (S群)に分け術後8週でOGTTを施行。腸管炎症性サイトカイン・腸管バリアclaudin-1、肝NASH grading/staging、肝腫瘍個数・サイズ、microbiomeを比較。(2:発癌誘導剤を用いた検討)肥満糖尿病ラットをDJB群、開腹のみSham群に分け術後肝発癌誘導剤DENを自由飲水させ6週で犠死。肝腫瘍個数・サイズ・HE染色・Ki67indexを比較。<結果>(検討1)D群の血糖はS群に比し低値でinsulin抵抗性が改善。D群AST、ヒアルロン酸は低くNASHも軽度。D群microbiomeでinsulin抵抗性・肝steatosis改善に関連のあるProteobacteriaが増加。D群腸管炎症性サイトカインはS群より低値。ileum、colonのclaudin-1はD群で強発現しバリア機能が維持された。両群とも肝に腫瘍形成はみられず。(検討2)体重、血糖は両群間で差を認めず。両群とも肉眼的に腫瘍形成は不明瞭であったが、S群に比してD群で腫瘍細胞が少ない傾向を認め、Ki67indexも有意に減少していた。<まとめ>Bariatric surgeryには腸管炎症沈静化・透過性の維持により各臓器への炎症性サイトカインの流出が抑制されていた。各臓器の炎症が抑制されることにより炎症が起因とされる発癌が予防されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、検討1.Metabolic surgeryの腸内細菌叢変化がインスリン抵抗性・NASH、肝発癌に及ぼす影響について、昨年課題としていたDENによる肝発癌誘導モデルに関してはほぼ確立し、DJBで腫瘍形成が少ない傾向がみられた。今後は詳細なメカニズム検討のため、腸内細菌叢の解析やPCR、免疫染色などを行う予定である。さらにその結果を受けて、検討2.Metabolic surgery術後腸内細菌叢の便移植(FMT)・特定の菌種投与がインスリン抵抗性・NASH、肝発癌に及ぼす影響を検討する予定である。しかし、それらに影響を及ぼす菌種の同定が出来ないと、検討2に進むことができないが、現段階ではその点が未だ達成されていないため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
検討1.Metabolic surgeryの腸内細菌叢変化がインスリン抵抗性・NASH、肝発癌に及ぼす影響について、今後詳細なメカニズム検討のため、腸内細菌叢の解析やPCR、免疫染色などを行う予定であり、現在腸内細菌叢の解析を行っている段階である。腸内細菌叢の解析については、次世代シーケンサーによる菌叢解析16SrRNA解析を用い、大量の菌種を網羅的に解析を行う。その結果をもとに、より効率的に特定菌種の同定を行うため、PhylumからSpeciesレベルまで各検体の菌組成を把握し、類似度をPCoA(Prinecipal Coordinates Analysis:主座標分析)およびクラスター解析で検討を行う。これらの作業により、菌種の同定に結びつく可能性があると思われる。その後、これらの結果をもとに、検討2.Metabolic surgery術後腸内細菌叢の便移植(FMT)・特定の菌種投与がインスリン抵抗性・NASH、肝発癌に及ぼす影響を検討する。
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