研究課題/領域番号 |
21K08598
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
日高 匡章 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (10457541)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肝前駆細胞 / 胆管再生 / 肝再生 |
研究実績の概要 |
【背景】ラット及びマウス成熟肝細胞を3つの低分子化合物(ROCK阻害剤、TGF-β阻害剤、GSK3阻害剤)を添加した培地で培養すると肝前駆細胞(Chemically-induced Liver Progenitor; CLiP)にリプログラミングすることが先行研究により報告されている。研究代表者はこれまで肝細胞シートを用いた研究(ヒト肝細胞と線維芽細胞との共培養シート)にて、マウスに移植した後、ヒト肝細胞の培養に成功している。現在の肝臓再生医療では、肝細胞が産生した胆汁は胆管への排泄経路がなく、肝細胞から胆管への胆汁排泄経路構築が大事な解決すべき問題点となっている。 【目的】本研究では、ラットおよびヒト成熟肝細胞からCLiPを用いて、胆管への誘導を図ると同時に、肝細胞から胆管への胆汁排泄経路構築を行う。 【結果1:ラットCLiP作製、胆管細胞へ分化誘導の適切な条件設定】MEFを高濃度、低濃度に分けてCLiPから胆管誘導を行った。高濃度では嚢胞状の胆管となり、低濃度では索条構造の胆管を作成することが可能であった。 【結果2:ラットCLiPから誘導した胆管細胞と肝細胞の共培養による胆汁誘導】ラットCLiPから誘導された胆管細胞、肝細胞を各々培養した後、共培養を行った。胆管細胞をディッシュ上で培養した後、誘導した肝細胞を混ぜて培養、胆管の排出経路が作成されることをローダミンによる視覚的胆汁排泄にて確認した。現在、胆道システムを構築するための実験を進めている。 【結果3:ヒトCLiPから誘導した胆管細胞と肝細胞の共培養による胆汁誘導システムの確立】現時点では、ラットCLiPから誘導した胆管細胞、肝細胞の胆汁誘導システムは確立できたが、ヒト肝細胞から誘導したCLiPからの胆管細胞誘導は実現していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現状では、ラット肝細胞からCLiPを作成、適切な培養条件を確立し胆管細胞への誘導に成功している。また、CLiPから誘導した胆管細胞と肝細胞を共培養することで、肝細胞からの胆汁排泄経路を確立できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、胆管誘導組織の確立と障害モデルへの移植実験や、ヒト肝細胞からのCLiP採取、胆管細胞への誘導を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大により当初予定していた成果発表及び情報収集のための学会参加旅費が発生しなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度実施予定の実験にて使用する試薬・実験器具の購入費として充当する予定である。
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