研究課題
【背景】ラット及びマウス成熟肝細胞を3つの低分子化合物(ROCK阻害剤、TGF-β阻害剤、GSK3阻害剤)を添加した培地で培養すると、肝前駆細胞(Chemically-induced Liver Progenitor; CLiP)にリプログラミングすることが先行研究にて報告されている。研究代表者はこれまで、肝細胞シートを用いた研究(ヒト肝細胞と線維芽細胞との共培養シート)にて、マウスに移植した後、ヒト肝細胞の培養に成功している。現在の肝臓再生医療では、肝細胞が産生した胆汁は胆管への排泄経路がなく、肝細胞から胆管への胆汁排泄経路構築が大事な解決すべき問題点となっている。【方法】今年度の研究では、ヒト成熟肝細胞から誘導したCLiPを用いて、胆管への誘導を図ると同時に、肝細胞から胆管への胆汁排泄経路構築を行った。【結果】1.ヒトCLiPの培養においては線維芽細胞が混在し線維芽細胞の存在によって胆管構造の形成が抑制された。線維芽細胞除去法を利用してヒトCLiPの純度を向上させた結果、効率的に胆管ネットワーク形成を実現させた。2.ヒトCLiP由来胆管ネットワークにおいて増殖因子であるHGFならびにEGF添加による影響を評価した結果、HGF添加によって胆管特有のトランスポーター発現が向上するとともにネットワーク構造が容易に形成可能であった。3.ヒトCLiP胆管ネットワーク上に成熟肝細胞を播種したところ、部分的に肝細胞とのコネクトが確認でき疑似胆汁であるCLFを添加したところ、肝細胞を介して胆管構造内へ排泄する様子が確認できた。
2: おおむね順調に進展している
昨年度、ラット肝細胞からCLiPを作成、適切な培養条件を確立し、胆管細胞への誘導に成功している。CLiPから誘導した胆管細胞と肝細胞を共培養することで、肝細胞からの胆汁排泄経路を確立できている。今回、ヒト肝細胞からの効率的なCLiP作製が可能となった。
今後、胆管誘導組織の確立と障害モデルへの移植実験へ進めていく。
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