【背景】ラット及びマウス成熟肝細胞を3つの低分子化合物(ROCK阻害剤、TGF-β阻害剤、GSK3阻害剤)を添加した培地で培養すると、肝前駆細胞(Chemically-induced Liver Progenitor; CLiP)にリプログラミングすることが先行研究にて報告されている。研究代表者はこれまで、肝細胞シートを用いた研究(ヒト肝細胞と線維芽細胞との共培養シート)にて、マウスに移植した後、ヒト肝細胞の培養に成功している。現在の肝臓再生医療では、肝細胞が産生した胆汁は胆管への排泄経路がなく、肝細胞から胆管への胆汁排泄経路構築が大事な解決すべき問題点となっている。 【方法】3年間の研究で、ヒト成熟肝細胞から誘導したCLiPを用いて、胆管への誘導を図ると同時に、肝細胞から胆管への胆汁排泄経路構築を行った。 【結果】2021-22年の結果:1.ヒトCLiPの培養においては線維芽細胞が混在し線維芽細胞の存在によって胆管構造の形成が抑制された。線維芽細胞除去法を利用してヒトCLiPの純度を向上させた結果、効率的に胆管ネットワーク形成を実現させた。2.ヒトCLiP由来胆管ネットワークにおいて増殖因子であるHGFならびにEGF添加による影響を評価した結果、HGF添加によって胆管特有のトランスポーター発現が向上するとともにネットワーク構造が容易に形成可能であった。3.ヒトCLiP胆管ネットワーク上に成熟肝細胞を播種したところ、部分的に肝細胞とのコネクトが確認でき疑似胆汁であるCLF添加にて肝細胞を介して胆管構造内へ排泄する様子が確認できた。2023年度:上記のオルガノイドは、MHとBD構造の両方に一致した遺伝子発現パターンを示し、機能解析により、胆汁アナログを輸送する能力が確認された。肝硬変肝組織から採取したhCLiPから、機能的な患者特異的オルガノイドを作製することに成功した。
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