研究課題/領域番号 |
21K08601
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
小林 大介 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60376548)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸管閉鎖 / モデル疾患生物 / メダカ / アクトミオシン |
研究実績の概要 |
本研究ではアクトミオシンの制御に異常により胚発生時に腸管閉鎖を生じるメダカの突然変異体を用い、腸管閉鎖症の発症機構の一端を明らかにすることを目的としている。本年度は(1)腸管閉鎖部位における遺伝子発現変動のシングルセルレベルでの解析、(2)腸管閉鎖を生じる際のライブイメージング、のための予備実験を行った。 (1)胚の腸管の細胞をシングルセルのレベルでバラバラにする条件の検討を行った。条件検討の結果、高い生存率かつ効率よくシングルセルを得る条件が見つかった。またシングルセル解析では、野生型と変異体の間での遺伝子変動を解析するが、解析を予定しているステージでは野生型と変異体の胚は形態では識別できない。現在は制限酵素断片長多型により胚の遺伝子型を判定しているが、この手法では効率よく両者を識別して必要な細胞数を確保することは難しい。この点を改善するために、原因遺伝子の遺伝子座に組織特異的なプロモーターに依存して蛍光タンパク質を発現するコンストラクトを挿入し、遺伝子が破壊されたアリル特異的に組織特異的な蛍光タンパク質を発現する系統の作出を試みた。その結果、解析を予定しているステージで変異体のアリル特異的に蛍光タンパクを発現する系統の作出が進行しつつある。(2)共同研究によりライブ観察のための顕微鏡システムの検討を行った。ライトシート顕微鏡と2光子顕微鏡を比較検討した結果、2光子顕微鏡が観察に適することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シングルセル解析の準備として、切り出した胚の腸管から細胞を分散させる条件を検討した。その結果コラゲナーゼと市販の非酵素性の細胞分散液を併用することで、腸管の細胞を効率よく解離する条件が見つかった。また変異体アリルを識別する方法として、眼のレンズに発現するcrystallinと心筋に発現するcardiac myosin light chain2 (cmlc2) のプロモーターを用い、GFPおよびmCherryを組織特異的に発現するコンストラクトを変異体の原因遺伝子であるmypt1の遺伝子座にCRISPR/Cas9の系を用いてノックインした。これまでにcmlc2プロモーターにより心臓特異的にmCherryを発現するノックイン系統を得ている。 ライブ観察の準備として、観察するための顕微鏡とメダカの系統の検討を行った。ライトシート顕微鏡と2光子顕微鏡を比較したところ、ライトシート顕微鏡では解析を予定しているステージにおいて胚の腸管のきれいな像を得ることが難しかった。一方で2光子顕微鏡ではきれいな像が得られ、今後の観察には2光子顕微鏡を用いることに決定した。また既に作成済みの腸管上皮でGFPを発現する系統は腸管上皮のライブ観察が可能であったが、アクチンの動態の観察のために作成したLifeact-mCherryを腸管上皮で発現する系統では蛍光強度が低く、このままではライブ観察は困難であると判断され、新たな系統の作出が必要であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
ライブで変異体アリルを識別可能な系統が作出でき次第、サンプルを調整しシングルセル解析の委託を行う予定である。ライブ観察に関しては、腸管の上皮細胞の細胞膜を可視化した系統では観察に十分な蛍光強度が得られているが、アクチンの動態を可視化する系統では蛍光強度が不十分であった。そのために以下の方法で蛍光強度を上げる計画をしている。1つ目は現在使用しているLifeact-mCherryのmRNAを合成して受精卵に導入する方法である。この方法ではinjectionするmRNAの量を増やすことで蛍光強度を上げることが期待できる。一方この系では全身にmCherryが発現するが、腸管の位置は腸管特異的に発現するGFP蛍光で確認でき、また観察自体も上記のように2光子顕微鏡を利用する予定なので、腸管以外で発現するmCherryの影響については最小化できると考えている。また高濃度で発現させた場合の内在性アクチンの動態への影響も考えられるため、よりよい観察用プローブとして他の手段も視野に入れている。現在、生体内でアクチンの動態を可視化するための様々なプローブが開発されている。例えばUtrophin、F-tractin、nanobodyなどである。これらを利用したコンストラクトも作成し、本研究において最適なプロープを探してライブ観察を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
シシングルセル解析のためのサンプル調製が本年度中には間に合わなかったため、そのための費用を繰り越した。
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