研究課題
マウス胃癌細胞YTN16をC57/BL6マウスの腹腔内に接種することを繰り返し、腹膜播種高転移株YTN16Pを作成した。これらの細胞株の培養上清から超遠心法を用いてエクソソームを分離、抽出し、カゼイン腹腔内投与後に腹腔内に滲出した好中球を分離し、それに添加して細胞膜非透過性核酸検出試薬SYTOXで染色してNETs誘導性を測定したところ、YTN16P由来のエクソソーム添加群でNETsの産生が有意に上昇することが確認できた。また、マウス大腿骨から採取した骨髄細胞に添加、4~24時間培養し、同様の方法でNETsを作成したところ、TN16P由来のエクソソーム添加群でNETsの産生が若干上昇する傾向が認められた。YTN16と亜株YTN16pをBL6マウスの腹腔内に接種し作成した腹膜播種巣から組織切片を作成し、抗 Gr1抗体で好中球を NETs をシトルリン化ヒストン3 (Cit H3) に対する抗体で免疫染色を行ったところ、YTN16PにてGr-1(+)好中球とCit H3(+)のNETsの密度が多く、CD8(+)T細胞は少ない傾向を認めた。末梢血好中球をLPSで刺激しNETを産生させる実験系にしメトホルミンを添加すると、濃度依存性にNET産生が抑制された。また、NETはCD3抗体とIL-2で活性化したリンパ球のCXCL11に対する遊走を強く抑制した。また、大腸癌治癒切除280人中メトホルミン内服62症例は非内服症例と比較してDFSが有意に良く(p<0.01)。メトホルミン内服群におけるCD66b(+)CitH3(+)NETの密度は有意に低く( p<0.001)、その密度はCD8(+)腫瘍浸潤リンパ球の密度と逆相関を示した。以上の事実から、がん組織内のNETはエフェクターT細胞の浸潤を抑制することで抗腫瘍免疫を抑制し、癌の進行を助長している可能性があることが示唆された。
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BJS Open
巻: 7 ページ: -
10.1093/bjsopen/zrac154