研究実績の概要 |
2021年度にデータセットを作成した256例の1年定期生検について、全標本の病理学的評価を行った。細胞集塊は目視で100個以上の単核球と定義し、集塊の中に萎縮尿細管を含め尿細管が存在しないものとした。部位により被膜下(Subcapsular)、傍血管(Perivascular)、傍糸球体(Periglomerular)に分けて記録した。大部分がPerivascularパターンを呈し、以後の解析はPeriglomerular病変(以下PVA)のみで行った。PVAと共存する病理診断および個々の移植腎病変はBanff2017分類に基づいて評価した。またPVAの有無と移植腎生着との関連も検討した。その結果、PVAは31.4%にあたる81例に認めた。PVA陰性の175例と比べPVA陽性群では拒絶の既往が多く(32.1% vs 12.4%, P=0.0003)、以下のBanffスコアが高かった:tiスコア(1.3 ± 0.8 vs. 0.6 ± 0.8, P<0.0001)、iスコア (0.7 ± 0.8 vs. 0.2 ± 0.5, P<0.0001)、i-IF/TAスコア(1.3 ± 1.2 vs. 0.7 ± 0.9, P<0.0001)、tスコア(1.4 ± 1.1 vs. 0.6 ± 0.9, P<0.0001)、ciスコア score (1.2 ± 0.9 vs. 0.9 ± 0.9, P=0.01)。PVA陽性例の病理診断は拒絶なし49.4%, 慢性活動性T細胞関連拒絶21.0%, ボーダーライン変化18.5%, 急性T細胞関連拒絶6.2%であった。PVA陽性例の診断は陰性例と比べ慢性活動性T細胞関連拒絶の頻度が高かった(21.0% vs. 4.0%, P<0.0001)。PVA陽性例と陰性例の移植腎生着率を全症例、拒絶あり、拒絶なしに分けて検討したが差を認めなかった。
|