研究課題/領域番号 |
21K08621
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
大石 海道 長崎大学, 病院(医学系), 医員 (00899536)
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研究分担者 |
松本 桂太郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (80404268)
永安 武 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80284686)
馬場 雅之 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90771957)
野中 隆 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (30606463)
朝重 耕一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (70457547)
町野 隆介 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (90728081)
富永 哲郎 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (60457546)
小山 正三朗 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (20815972)
土肥 良一郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (00817786)
高木 克典 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90635856)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ナノバブル / 創傷治癒 / 創感染 |
研究実績の概要 |
ウルトラファインバブル溶液(ナノバブル水)は、気体を長時間液体の中へ閉じ込められることが特徴であり、空気、酸素、二酸化炭素、窒素を用いたナノバブル水の一部が抗菌効果を持つことを知られている(生野ら、2019年)。これは人体への応用が可能であり、様々な感染症への利用が可能であると思われる。一方で、抗菌剤使用による耐性菌の発生は、現代医療の大きな問題点である。本研究では、体表面、体腔内の感染症への新たな治療法および創傷治癒の手段として、様々な気体を用いたナノバブル液の有効性を検証し、抗菌薬を使用しない感染症治療法および創傷治癒促進法の開発を行うことを目的とする。 組成の異なるナノバブル水(O2,CO2,N2,空気含有水)を作成し、in vitroでの細菌に対する抗菌作用の検証、ヒト細胞株に対する与える影響、動物感染創モデルを使用した創傷治癒能力、抗菌作用などを検証していく。生体への影響が少ない気体を用いて作成した、長期保存可能で安価なナノバブル水が、体表面、体腔内感染創に対する新たな治療法として有用である可能性を明らかにする。 in vitroの実験により、E.coli,A.aureusの細菌に対して、空気ナノバブル水、CO2ナノバブル水の抗菌効果が認められた。今後、ヒト細胞株への影響や、ラット感染創モデルを使用して、感染創の抗菌作用・創傷治癒効果を検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画としては、①抗菌効果の検証・解明、②安全性評価、③治療効果の検証である。現在の進捗としては、①の段階まで行っている。 組成の異なるナノバブル水(O2含有水、CO2含有水、N2含有水、空気含有水)を作成し、それぞれの各種細菌株(E.coli, A.aureus)に対する抗菌効果をプレート上で評価した。 細菌コロニーを滅菌水で、懸濁度MCF0.2で懸濁液を作成した。それを生食、もしくは各種ナノバブル水で50倍希釈し、希釈液から培地に播種、CO2インキュベーターで24時間培養し、プレート上のコロニー数を計測した。すべてのナノバブル水が生食より抗菌効果を示したが、特に、E.coliに対しては空気ナノバブルが、A.aureusに対してはCO2ナノバブルが最も効果を認めた。 感染創モデルを作成するにあたり、使用細菌とナノバブル水の種類の準備、実験環境の準備などにあたり手続きを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は②安全性の評価、③治療効果の検証、の実験を進めていく予定である。具体的には、②は肉芽組織の主要構成成分である、ヒト線維芽細胞(NHDF)、ヒト臍帯静脈血管内細胞(HUVEC)を各種ナノバブル水混入培地で培養し、増殖・生育状況を通常培地と比較していく。③は、ラット感染創モデルを作成し、①の実験で効果のあったナノバブル水と細菌の組み合わせと、生食で洗浄処置を行い、感染創の治癒状況、細菌数などを比較する。感染創モデルは、ラット背部皮下を2x2cmほど全層切除し、筋層の面に細菌を播種(E.coli,A.aureus)、プラスチックシートで被覆して、密閉することで感染創を作成する。洗浄は機械的を避けるために、ゆっくり徒手的に洗浄する、もしくは、低圧洗浄装置を使用して、10ml/minの速度で10分間(100ml)洗浄する。播種後8時間から洗浄開始、24時間おきに洗浄する。1日目、3日目、7日目で犠牲死させ、創部組織を採取する。メンブレンフィルター法による細菌定量測定、HE染色による組織の治癒状態やバイオフィルム形成状況の評価を行う。 以上の流れで、今後実験を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画の遅れにより、細菌、培地、実験動物購入などについて昨年度までの使用金額に残が生じました。また、インキュベーターも以前から使用しているもので代用しているため、購入を見送りました。今後の実験計画に沿って、実験動物、細菌、培地、ナノバブル生成などに伴う費用や、論文作成、研究発表に伴う経費に使用していく予定です。
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