研究課題/領域番号 |
21K08622
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
吉井 大貴 熊本大学, 病院, 医員 (00792582)
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研究分担者 |
菰原 義弘 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40449921)
横内 裕二 熊本大学, 発生医学研究所, 特定事業研究員 (60252227)
本田 正樹 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (80573609)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | SOX9 / 胆管発生 / 肝内胆管 / 透明化 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
本課題では、胆管発生のメカニズムや胆汁うっ滞性肝疾患の病態進展のメカニズムとSOX9を取り巻くシグナル経路との関連について解析し、胆管発生の複雑なメカニズムの解明への貢献及び胆汁うっ滞性肝疾患をターゲットとした新たな治療戦略の構築へとつなげることを目的としている。2021年度は、コントロールマウスとSox9コンディショナルノックアウト(cKO)マウスの肝臓を用いた胆管の発生における形態学的な解析と免疫組織化学的な解析を行った。 マウス肝内胆管の形態観察を行うにあたり、市販されている透明化試薬を用いた臓器透明化および肝内胆管内へのインク注入を併用することで、胆管の可視化に成功した。コントロールマウスとSox9cKOマウスとの比較では、5週齢時点におけるインクで造影された肝内胆管の密度に差が認められ、特に毛細胆管の描出が不良であった。10週齢時点ではSox9cKOマウスの肝内胆管のある程度の成熟は確認されたが、コントロールマウスに比べて造影される肝内胆管の密度の差は依然として認められた。一方で、免疫組織化学染色ではいずれのマウスにおいても毛細胆管を同定することが可能であった。また、Sox9cKOマウス肝臓のzone2の周辺では肝壊死巣が散見され、血清学的に肝酵素の有意な上昇が確認された。門脈領域周囲ではオステオポンチン陽性の肝前駆細胞の集簇が認められた。以上より、Sox9KOマウスでは胆管の成熟遅延が認められ、特に毛細胆管と細胆管あるいは小葉間胆管との接続が遅延しているため、胆汁うっ滞関連の肝傷害、再生が起きている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の当初の計画通りに実験がすすみ結果を出すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、胆管発生におけるSox9の上流シグナル経路の動態について解析を行っている。 また、SOX9の上流シグナル経路の有無がどの様に胆管発生/形態形成に関わっているか、関連する種々のマーカーの動態を胎生期~成体マウスにかけて経時的に免疫組織学的・遺伝学的に解析する予定で、特にALK5(TGF-βシグナル経路)を中心とした機能解析について行う予定である。明らかな胆管発生異常がみられる場合は、RNAシーケンスによる比較トランスクリプトーム解析により、遺伝子発現量の違いを詳細に解析する。 また、ヒトサンプルにおける様々な疾患毎の細胆管反応(DR)の解析についての報告はほとんどない。様々な胆汁うっ滞性肝疾患の肝サンプルを用いて、疾患毎にDRやSOX9/SOX9上流シグナル経路の構成因子について免疫組織学的あるいは遺伝学的解析を行い、DRや病態進展におけるそれらの機能的な役割についても解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
胆管発生・形態形成に関わる研究は継続して行う必要があり、それに関わる研究費として次年度に使用する予定である。また、本年度の研究により明らかになった結果は次年度の学会で発表したり、研究のさらなる進展のため情報収集に使用する予定である。また論文投稿の校正費および投稿費として使用する予定である。 TGF-βシグナリング経路の構成因子の抑制(dominant negative form)もしくは活性化(constitutive active form)と、それが起きている細胞の追跡を同時に行うことができるマウス(抑制と活性化の2系統)の胎児期における解析に使用予定である。
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