研究課題/領域番号 |
21K08623
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
松久保 眞 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (00528036)
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研究分担者 |
家入 里志 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (00363359)
大西 峻 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (10614638)
矢野 圭輔 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (30757919)
加治 建 久留米大学, 医学部, 教授 (50315420)
杉田 光士郎 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特任助教 (50781514)
武藤 充 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (70404522)
町頭 成郎 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (80404523)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 短腸症候群 / 完全静脈栄養 / 腸管不全関連肝障害 / HGF |
研究実績の概要 |
IFALD(腸管不全関連肝障害)誘導短腸症候群モデルラットへのHGF投与による肝内脂質輸送促進の検証 小児外科疾患により大量小腸切除を余儀なくされた短腸症候群患児らは、腸管からの栄養吸収障害により完全静脈栄養(TPN)によるサポートを必要とする。これらの患児ではTPNが長期に及ぶと腸管不全関連肝障害(IFALD)を高率に発症し、そのIFALDの管理と治療が生命予後を大きく左右する。当研究グループからはこれまでにIFALDの予防・治療法について多くの基礎・臨床研究報告を発信したが、肝内の脂質輸送機構の観点からの研究は未着手である。今回急性肝再生を強力に促進する増殖因子で、脂肪肝からの回復作用を持つ肝細胞増殖因子(HGF)のIFALDに対する予防・治療効果を検討する。本研究では、IFALD誘導短腸症候群モデルラットを用い、HGFが肝内脂質輸送と排出を促進していることを証明し、IFALD克服のための新規予防・治療法の1つとなり得るかを検証することを目的とする。 まずは、ヒトの半年間に相当する7日間をモデルラットの長期絶食、TPN管理を行いTPN関連肝障害を来すことを確認した。その後に同モデルラットに容量を変えてHGF投与を行いHGF非投与群と生理学的評価、血液生化学検査、病理組織学的検査、PCR検査などで比較を行いTPN関連肝障害に対する予防効果の評価を行った。その後に大量腸管切除手術を行った短腸症候群ラットに絶食TPN管理を行い、IFALD誘導短腸症候群モデルラットを作成し、同モデルラットに対しHGF投与を行い同様にHGFのIFALDに対する予防効果の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TPN関連肝障害モデルラット、IFALD誘導短腸症候群ラットの作成に成功し、HGF静脈内投与による肝障害予防効果を病理組織学的に確認できた。またHGF静脈内投与ラットと非投与ラットの比較を行い、HGFの肝障害予防に対するメカニズムを推測することができた。 メカニズムとしてHGFによる脂肪肝抑制効果、絶食による腸管粘膜萎縮の予防効果、腸内細菌叢の改善などが関与していることが推測される動物実験の結果となった。 HGFの脂肪肝抑制効果の機序としては、HGFによる内因性リポ蛋白(VLDL)の活性化や肝細胞の抗アポトーシス作用が原因として挙げられた。 動物実験によりHGF投与による肝障害の予防効果の原因となるメカニズムはいくつか挙げられたが、HGF投与による肝障害の治療効果の原因となる因子は結果が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
HGFがIFALDを予防治療するメカニズムを解明する。 TPN関連肝障害モデルラット、IFALD誘導短腸症候群ラットに対し、肝障害発症前または肝障害発症後にHGF投与を行い、予防治療効果を判定を行う。投与量、投与期間を変えて実験を行い、HGFの投与量、投与期間による肝障害の予防治療効果の評価を行う。 予防治療効果を得られていた時には、HGF投与群と非投与群のラットで生理学的評価、血液生化学検査、病理組織学的検査、PCR検査などで比較を行いそのメカニズムの検証を行う。 またHGFの脂肪肝抑制効果の要因と思われるVLDLや抗アポトーシス作用に関しては分子生化学的に分析を行い、詳細な機序を明らかにする。 得られた結果は国内、国際学会で発表し論文化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験によるHGF効果の確認が当初の予定より少ない実験動物の数で得られることができた。またCOVID-19情勢に伴い,学会の渡航費がかからず、予算に繰り越しが生じた。 繰り越した予算に関しては、現在までに得られていないHGFの肝障害予防の機序を同定するため更なる動物実験、検査データの解析に使用する消耗品等の追加購入に今後当てる予定である。
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