本研究では、体内埋込機器の筐体表面の温度上昇を抑制する技術の開発を目的とし、潜熱蓄熱材の蓄熱(吸熱)効果の影響について検討を行った。体内埋め込み機器を想定して、金属筐体内に電気機器を模擬した発熱体と、隙間の空間に潜熱蓄熱材を封入した。また、体内埋め込み機器の体内への埋め込み状況を模擬するために、37℃に温度を維持した寒天内へ埋め込みを行った。寒天は、対流ではなく、筋組織における伝導による放熱を模擬するために使用した。封入する潜熱蓄熱材の容量について検討を行ったところ、潜熱蓄熱材の容量の増加に伴い、筐体表面温度上昇の抑制、一定の温度に到達するまでの時間の延長効果が見られた。これは単純に潜熱蓄熱材の容量増加に伴い、蓄熱(吸熱)の効果が大きくなったためと考えられた。ただし筐体表面における局所的な温度上昇なども確認された。これは筐体内部における潜熱蓄熱材の局所的な融解が起こり、熱の伝導路が生じたためと考えられた。封入した潜熱蓄熱材の蓄熱(吸熱)効果を最大限に利用するためには、筐体内の潜熱蓄熱材へ均等に熱を伝える必要性があることが確認された。封入時の潜熱蓄熱材の初期形状(粒状、板状など)によっても、温度上昇抑制効果に影響が生じることから、潜熱蓄熱材を封入した球状のカプセルを筐体内に敷き詰める方法や、銅を材料としたスポンジ状の銅発泡体に潜熱蓄熱材をしみ込ませたものを封入する方法により、熱を潜熱蓄熱材に均等に伝える工夫の必要性が確認された。また、筐体内に空気で満たされた空間が存在する場合には、断熱として機能をするため、空気量が多くなると、吸熱や放熱がうまくいかずに、筐体内部の電気機器の放熱がうまくいかずに悪影響を及ぼす可能性が考えられた。また、吸熱して液体となった潜熱蓄熱材を固体へ相変化させ、再び吸熱作用を持たせるためには、筐体表面からの放熱方法について、今後の詳細な検討が望まれる。
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