研究課題/領域番号 |
21K08639
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
高橋 良彰 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (50621710)
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研究分担者 |
木下 義晶 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80345529)
小林 隆 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40464010)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腸管不全 / 腸管不全関連肝機能障害 / 腸内細菌 / 短腸症候群 |
研究実績の概要 |
短腸症候群やヒルシュスプルング病類縁疾患のような腸管不全患者は、長期間の中心静脈栄養を要することが多い。腸管不全患者の予後を左右する因子として、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)や腸管不全関連肝機能障害(IFALD)が知られている。IFALDを発症すると、死亡率は劇的に増加するため、早期に中心静脈栄養からの離脱が重要である。 昨年度は、当科でフォローアップしている腸管不全患者の再評価を行った。腸管不全患者は9例認め、6例が短腸症候群で3例がヒルシュスプルング病類縁疾患であった。点滴を離脱した症例は4例(44.4%)のみであり、半数以上は点滴を離脱できていなかった。離脱できていない症例のうち3例(60%)はヒルシュスプルング病類縁疾患であった。ヒルシュスプルング病類縁疾患は点滴離脱できないリスク因子であると考えられた。また、IFALDを発症した症例は6例(66.7%)と高率に認めていたが、ω3系脂肪酸投与などにより肝不全までは進行せず、生存していた。 また、2022年度にIFALDを発症した短腸症候群の患児の腸内細菌を調査した。通常、善玉菌といわれるLactobacillales目やClostridiales目などグラム陽性細菌であるFirmicutes門が最優勢を占め、病原細菌や悪玉菌といわれるグラム陰性菌のProteobacteria門を抑制した、比較的安定した腸内細菌に変化していくのだが、患児はProteobacteria門が半数以上を占めており、腸内細菌叢の乱れた状態であるdysbiosisであった。科レベルの解析では、Proteobacteria Gammaproteobacteria Pseudomonadales Moraxellaceaeが半数を占めた。腸内細菌とIFALD発症の関与も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19の影響もあり、動物実験に従事する人員を確保することが困難であった。そのため、当院での腸管不全患者に関する再調査を行った。また、実際に腸管不全関連肝機能障害(IFALD)を発症した短腸症候群の患児の腸内細菌叢の調査を行った。腸内細菌叢の評価には非常に時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験を行う人的、時間的余裕があれば、腸管不全関連肝機能障害のマウスを用いた研究を行いたい。まず、腸管不全関連肝機能障害のモデルマウスを作成し、脱落乳歯歯髄幹細胞を用いた再生医療の研究をすすめたい。 その他にも、実臨床において、短腸症候群の患児の腸内細菌を経時的に評価し、IFALD発症との関連を調査したい。また、健常児の腸内細菌との差も評価したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスおよび間葉系幹細胞を用いた研究が行われていないため、動物実験に使用する道具や試薬の購入を次年度に繰り越したため。また、腸内細菌叢の評価も追加で行いたいため。
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