研究課題/領域番号 |
21K08646
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河野 雄紀 九州大学, 大学病院, 医員 (10849102)
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研究分担者 |
松浦 俊治 九州大学, 大学病院, 准教授 (10532856)
吉丸 耕一朗 九州大学, 医学研究院, 講師 (60711190) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダイレクトリプログラミング / iHepPC / 肝線維化 / 細胞移植 |
研究実績の概要 |
本研究は、ダイレクトリプログラミング(Direct Reprogramming)を用いて作製した誘導ヒト肝前駆細胞(human induced hepatic progenitor cells:hiHepPC)の、肝線維化・肝硬変に対する効果および移植後の生着率を評価し、臨床応用に近づけることを目的とする。 まずヒト臍帯静脈内皮細胞(human umbilical vein endothelial cell:HUVEC)を用いてhiHepPCを作製し、免疫不全マウスであるNSGマウス(NOD/SCID/gammaマウス)に四塩化炭素(CCl4)を継続投与してして作製した肝線維化モデルマウスにhiHepPCの移植を行った。移植前後で肝組織の線維化の程度を定量的に評価すると、コントロールと比較して線維化が抑制されていた。加えて血清中の肝障害マーカー・肝線維化マーカーは低下し、肝組織中の肝線維化遺伝子の発現も低下していた。このことからhiHepPC移植には肝線維化抑制効果があると考えられた。 移植後の生着率評価のため、マウスの各臓器よりDNAを抽出し、それについてヒト特異的DNA配列であるAlu配列についての定量的PCR(Alu-qPCR)を行うことで、マウス臓器中のhiHepPCの定量を行った。hiHepPCは、移植後一定量が肝臓に到達するが、速やかに減少することが確認された。最終的に移植細胞は、組織学的評価およびAlu-qPCRによる評価で、ごくわずかの残存しか認められず、少なくともhiHepPCの肝臓での増殖は認めなかった。 以上の結果から、hiHepPC移植には細胞が残存・増殖することなく、肝線維化・肝硬変を抑制する効果があると考えられた。一方、その機序については現状の実験結果からは不明確であり、今後次世代シークエンサー解析を含めた追加の実験が必要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝線維化モデルマウスを用いたhiHepPC移植について、肝臓の組織学的評価、血清学的評価、また肝組織から抽出したRNAによる遺伝子発現評価から、肝線維化抑制効果が確認できた。昨年の段階で不十分であった、マウスのサンプル数についても、対照実験を含め十分数確保でき、効果についてより詳細に示すことができた。 一方、肝線維化抑制の詳細な機序については、定量的PCRによる評価のみでは不明確であり、RNA-Seqを含めた次世代シークエンサーによる解析が必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
肝線維化抑制効果の機序解明のため、以下の2つの実験を行う予定である。 ①移植マウスの肝組織についてRNA-Seqによる解析 ②hiHepPCとヒト星細胞との共培養実験 以上の実験結果をもとに機序についての考察を行う。また結果をもとに、必要な追加解析について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
肝線維化抑制について詳細な機序を解明するため、RNA-Seqによる解析を行う予定である。 またhiHepPCとヒト星細胞との共培養を行うため、細胞およびトランスウェルプレート、また各種培養試薬を購入する予定である。
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