研究課題/領域番号 |
21K08651
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
住吉 秀明 東海大学, 医学部, 講師 (60343357)
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研究分担者 |
岡村 陽介 東海大学, 工学部, 教授 (40365408)
遠藤 整 東海大学, 医学部, 准教授 (10550551)
根本 仁 東海大学, 医学部, 講師 (40465183)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 再生促進薬 / ミズクラゲコラーゲン / 人工真皮 / 細胞生着促進 / 難治性皮膚潰瘍治療 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究の進捗状況を以下に示す。 ①ミズクラゲの成分から新規再生促進薬を開発する計画:(1) ミズクラゲコラーゲンを酵素処理により低分子化しHPLCと逆相カラムにより分離する計画は機器(フラクションコレクター)納入の遅延により施行が11月となったが、分離作業を集中的に行ない、人工真皮創傷治癒モデルを用いたin vivo条件で上皮化促進作用を有する成分の分離までを行なった。(2) 前述分離成分の化学組成解析を行なった。低分子化成分はSDS PAGEで解析が出来なかったため2次元薄層クロマトグラフィー (TLC) を試みたが、スポット数が多く明瞭な分離パターンを得られなかった。化学的解析は更に精製を進め、構成成分が限定された段階で改めて行なうこととした。(3) ミズクラゲコラーゲンの一次構造解析を行なった。mRNAの分離を行なったか純度が良くなかったためin silico解析を用い、ゲノム情報からコラーゲン遺伝子構造を複数見出した。現在アミノ酸配列予測を行なっている。 ②理想的な再構築組織を実現する人工構造材(人工真皮)を開発する計画:(4) 新薬候補成分の投与試験のために長期の人工皮膚生着実験系を確立する管理マニュアルを作成した。本スケジュールにより、健常および糖尿病モデルマウスで人工真皮の生着までの時系列データを安定して得られるようになった。 ③ 動物実験によるin vivoにおける臨床応用を見越した評価実験:(5)ミズクラゲコラーゲンを投与し、3週経過した健常および糖尿病モデルマウスについて、血中サイトカイン測定を行ない、過剰な炎症反応は見られないことを確認した。同時に抗ミズクラゲ抗体の測定を行い、抗体価の著しい惹起は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は課題 ①の再生促進成分を分離・精製する研究についてはHPLC機材(フラクションコレクター)の納入・設置とセットアップが遅れたことが初期遅延の原因となった。しかしながら、機材設置後から、皮膚再生促進成分の分離作業を集中的に行ない、順次マウス創傷修復実験に取り組んでいる。2022年度前期までに遅れの分を取り戻せる見込みである。 課題② のマウス中長期実験系の確立と課題③ の薬剤投与担体開発と薬物動態の実験は実験①の遅れに影響を受けたものの、先ず精製前のミズクラゲコラーゲン全抽出物の投与による生体への影響のデータから採り始めて予定通りの進捗であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題①の再生促進成分の精製実験は、遅れが認められるものの、回復しつつある。実験の進捗予定は初年度に立てた実験計画に対して大きな変更点は無い。 課題①の精製計画は、この後は現在効果が認められるフラクションの細分化と、成分の限定にしたがって構成成分の化学組成解析を進めていく。ミズクラゲゲノムから推測したアミノ酸1次配列構造が性状解析の助けと成り得るが、実際に日本近海で採取されるミズクラゲとmRNA配列に該当があるかRT-PCRを用いた確認が必要である。 研究課題②は予定通りの進行であり、これから課題①の成果物である精製サンプルを投与対象としたデータ収集に入っていく。 研究課題③は新開発人工真皮の中長期の生着実験のデータ取りを進めていく一方で、徐放性担体の導入含めた多機能性人工構造体の開発に繋げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度において、課題①のミズクラゲコラーゲンの再上皮化促進成分の精製の項目が、HPLC機器の物品調達待ちのため、11月まで実験がスタート出来なかったことにより、その間に消費される予定の研究費が次年度に配分されることになった。11月以降より通常の倍のペースで精製を行なっているため、次年度使用額はその充当分としてに当てられる。
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