研究課題
2023年度は昨年から引き続き、複合組織片移植後の各組織における免疫反応を検討するために、異系組み合わせによるマウス異所性半顔面移植モデルを用いて、移植後2、6、9日目に摘出された移植片のヘマトキシリン・エオジン染色を行い、眼瞼、鼻腔、皮膚、血管、耳介軟骨、口腔粘膜、前上顎骨、及び切歯根部の病理像の変化を観察した。移植後2日目では皮膚、粘膜、血管において血管周囲に軽度なリンパ球の浸潤が観察された。移植後6日目では粘膜組織および皮膚組織において真皮および表皮へのリンパ球浸潤およびそのアポトーシスが認められた。移植後9日目では、粘膜組織のリンパ球浸潤は6日目と同程度であったが、皮膚組織ではすでに大部分の真皮および表皮に壊死が観察された。血管では静脈においてはリンパ球浸潤による重篤な血管炎が観察されたが、動脈では周囲にリンパ球の浸潤は観察されてものの血管炎は観察されず、内膜構造は保たれていた。軟骨、歯、上顎骨の組織において著明な変化は見られなかった。本研究では複合組織移植後の拒絶反応を詳細にかつ網羅的に解析するため、多様な遺伝子改変動物や免疫研究用試薬が入手可能であるマウスを用いて、皮膚、粘膜、血管、筋肉、骨などさまざまな組織を含む顔面組織を移植片とした異所性半顔面移植モデルを確立した。マウス顔面組織移植は現在のところ世界で数例のみ報告されているが、それらと比較して本モデルの移植片はより多種の組織を含み、温阻血時間も短く移植片のviabilityが保たれると考えられるため、より信頼のできるデータが得られると考えられる。このマウスモデルを用いて得られた詳細な情報は今後の臨床における複合組織移植の診断基準、治療方針、予後の改善に大きく貢献すると期待される。
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