研究課題
我々はインドシアニングリーン(ICG)の誘導体を組み込んだリポソームであるICG結合型リポソーム(LP-iDOPE)を設計開発し、これが腫瘍に特異的に集積し、近赤外線照射によって発熱作用と活性酸素を産生することを示してきた。本研究では、肝がんにおけるLP-iDOPEを用いた光線力学的治療(Photodynamic Therapy: PDT)による抗腫瘍効果の検討と、LP-iDOPEに抗がん剤を内包してナノキャリアとして用いる治療実験を行った。ヒト肝腫瘍由来細胞株(HuH6、HepG2)の細胞培養液中にLP-iDOPEを添加し、20時間後に近赤外線を照射した後に、MTT assayにて経時的に生存細胞数を測定したところ、生存細胞数の有意な減少を認めた。また、Hep53.4細胞をマウスの皮下に投与し、腫瘍体積が50mm3を超えたところでLP-iDOPE、およびLP-iDOPE に低用量のシスプラチンを内包したLP-iDOPE-CDDPを腹腔内に投与した。その後皮下腫瘍部位に近赤外線を照射し経時的に腫瘍体積を測定したところ、著明な腫瘍増殖抑制効果が認められた。さらに低用量のシスプラチンを内包したLP-iDOPE-CDDPを投与したところ、LP-iDOPE投与群よりもさらに強い腫瘍増殖抑制効果が認められた。一方でLP-iDOPEと低用量CDDPを混合して投与した群での腫瘍増殖抑制効果は、LP-iDOPE単独投与群と著変がなく、LP-iDOPEにCDDPを内包することで低用量であっても効果的な腫瘍増殖抑制効果が得られることが示唆された。以上の結果から、肝腫瘍におけるLP-iDOPEを用いたPDTの有効性が確認された。LP-iDOPEにCDDPを内包することで、低用量の抗がん剤による最大効果・最小副作用の実現が達成され、光免疫治療の分野に新たな道を拓くことが期待された。
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