研究課題/領域番号 |
21K08662
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
和田 有子 信州大学, 学術研究院医学系, 講師 (30419410)
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研究分担者 |
中山 泰秀 大分大学, 医学部, 客員研究員 (50250262)
柴 祐司 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (70613503)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バイオシート / 生体内組織形成術 / iPS細胞由来心筋細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は新しい心筋材料(iPSシート)の開発を目的としている。iPSシートとは生体内組織形成術(IBTA)によって作成されたバイオシートに対しin vitroにてiPS細胞由来心筋細胞(iPSC-CM)を生着させたシートである。自己組織由来であるバイオシートは、生体内における異物性を克服できるうえ、移植後に自己組織と癒合し、栄養血管を構築、個体の成長に伴って成長するという利点を持つ画期的な生体材料であるが、本研究ではそこへあらかじめiPSC-CMを生着させることで、心筋壁の補填材として十分な厚みを保持し、収縮力に寄与する代替心筋の構築を目指す。 本年度は (1)バイオシートの作製: ラットの背部皮下に基材を埋入し一定期間後に摘出、基材内部に形成されたバイオチューブを展開することによりバイオシートを得た。 (2)iPSC-CMの作成: ホタルルシフェラーゼ改変遺伝子および蛍光CaセンサーGCaMP遺伝子を導入したヒトiPS細胞より心筋細胞を分化誘導した。この両遺伝子の導入により、移植後のiPSシートの動態を生体イメージングにより非侵襲的に経時的観察できるとともに、移植心摘出後ex vivo試験ではGCaMPタンパクの蛍光イメージングによりnative心筋とバイオシート部の電気的協調性を確認することが可能となる。 (3)iPSシート作成法の検討: (1)より作製したバイオシートを96 well dishに敷き、その上に(2)で作成したiPSC-CMを播種、一定期間後にシートを固定・包埋し、組織学評価により、細胞数や培養期間の検討を実施した。 (4)異所性心移植モデルの長期的な評価: バイオシートを心筋壁へ置換したドナーラットの心臓をレシピエント動物へ異所移植する、というラット異所性心移植モデルにおいて、長期間(1年)にわたる移植心の拍動が確認でき、組織解析用のサンプルを摘出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS細胞由来心筋細胞(iPSC-CM)およびバイオシートをそれぞれ作成したうえで、iPSシート作成の条件検討を実施し、バイオシートへのiPSC-CM生着を確認できた。動物試験では、バイオシートによる左室壁置換を施した心臓を用いたラット異所性心移植モデルにおいて、長期の移植心拍動が確認でき、現在は組織学的評価を実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
iPSシートの作成(バイオシートへのiPSC-CM生着)については、組織評価と合わせ引き続き検討を行う。それらを免疫不全ラットを用いたiPSシートの左室置換・異所性心移植モデルに使用し、まずは移植後短期での評価を行い、必要に応じてiPSシート作成および移植法を変更する。iPSシートおよび移植法の確立後、移植後長期モデルの作成および評価へ移行する。 移植後の評価としては、iPSシートの生着をin vivo Bio Luminescence Imagingにより経時的に確認、移植心(左室壁置換)についてはエコーによる移植部位の収縮率および瘤化の有無、壁厚測定など実施する。移植後 1,3,6,12ヶ月後に移植心を摘出し、組織学的評価により内腔の血栓付着、壁厚、コラーゲン量を確認し、免疫染色ではiPSシート内への血管形成、iPSC-CMの成熟化、周囲のnative心筋細胞とのギャップジャンクション形成等を確認する。さらに、移植心摘出後ex vivo試験として、langendorf心灌流法を用いたGCaMPタンパクの蛍光イメージングによりnative心筋とバイオシート部の電気的協調性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、バイオシートおよびiPS細胞由来心筋細胞(iPSC-CM)の作成およびそれらを用いたin vitroでの検討が主となり、in vivoの試験数は当初の予定より少なくなったため、動物モデル作成にかかる費用が次年度使用額となった。 次年度は、異所性心移植モデルに対し、iPS細胞由来心筋細胞(iPSC-CM)を生着させたバイオシートの移植および経時的・組織的評価を実施予定である。また実際に動物へ移植することで、バイオシートに対するiPSC-CMの生着数・培養期間に関して追加の検証が必要となると考えられる。 動物実験、細胞培養、染色関連、その他消耗品等の購入に使用する。また本研究分野に関する最新の知見を得るためにも関連学会への参加も予定している。
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