研究課題
肝虚血再灌流障害においては、血管内皮細胞障害による組織因子(tissue factor: TF)発現から始まり, 凝固第Xa因子 (FXa) を介して, Thrombin活性に至るTF-FXa-Thrombin signaling cascadeが重要な役割を果たしている。よってマウス肝虚血再灌流障害モデルを用い実験を行い, TF-FXa-Thrombin signaling cascadeの制御による細胞保護効果について研究を行っている。まず直接Thrombin阻害剤(dabigatran)投与によって、GOTやGPTなどのトランスアミラーゼ値が有意に低下し、modified Suzuki’s scoreによる肝組織障害も減弱されており、肝虚血再灌流障害による肝障害は有意に軽減されていた。またLy6G陽性炎症浸潤細胞数は有意に減少し、IL-6やTNFαなどの炎症性サイトカインの分泌は抑制されており、抗炎症作用も認めた。アポトーシスに関しても、アポトーシスを誘導するCaspase-9の活性化は有意に抑制され、逆にアポトーシスを抑制するBcl2の発現は上昇し、TUNEL検査によるアポトーシス細胞数は有意に減少し、抗アポトーシス作用も認めた。それに加え直接Thrombin阻害剤投与によってトロンボモジュリンの発現が誘導され、それによって炎症反応やアポトーシスを誘導する細胞障害性のHMGB-1が抑制されいることを証明した。この作用は、in vivo及びin vitro実験で確認されている。
2: おおむね順調に進展している
順調に研究は進んでいる。
肝虚血再灌流障害における直接Thrombin阻害剤の細胞保護効果とメカニズムについての実験はほぼ終了し、次の課題であるFXa阻害及び組織因子阻害の実験を準備/開始している。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Liver Transpl
巻: 27 ページ: 363
10.1002/lt.25929