研究実績の概要 |
肝胆道系腫瘍に対する拡大肝切除時の温阻血後や, 肝移植グラフト保存時の冷阻血後などによる肝虚血再灌流障害 (ischemia reperfusion injury: IRI) は未だに解決されていない課題である. その大きな原因の一つとして, 血管内皮細胞障害による組織因子(tissue factor: TF)発現から始まり, 凝固第Xa因子 (FXa) を介して, Thrombin活性に至るTF-FXa-Thrombin signaling cascadeが存在する. この反応では凝固反応が促進され, 血栓形成を誘導されるだけでなく, 炎症反応も惹起されることから, いかにこのcascadeを制御するかが重要となる. よって, このcascadeでkeyとなるTF, FXa, Thrombinを制御することで, 肝IRIを抑制することが可能かどうか検証するとともに, その作用機序についても解明する. <マウス肝虚血再灌流障害における直接Thrombin阻害剤の細胞保護効果について> 直接Thrombin阻害剤(Dabigatran)投与は, トロンビンを介した細胞傷害シグナル伝達を直接的かつ選択的に阻害することにより, 内皮細胞を肝虚血再灌流障害から保護した. またDabigatran処理によって内皮細胞上の内因性TMが増強されると, 肝虚血再灌流障害に応答して内皮細胞から分泌される過剰なHMGB-1が不活性化され, 分解された. 最終的に, HMGB-1の類洞外への浸潤の減少が肝細胞の保護につながった. <マウス肝虚血再灌流障害における凝固FXa阻害剤の細胞保護効果について> 凝固Xa因子阻害剤(Edoxaban)は、類洞における微小血栓症を防御し、FXa-PAR-2が誘発する類洞内皮細胞における炎症を抑制することによって、マウスの肝虚血再灌流障害を改善した。
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