研究課題/領域番号 |
21K08664
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川島 雅央 京都大学, 医学研究科, 助教 (80766676)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 乳癌 / 細胞外小胞 / 脂質代謝 / リキッドバイオプシー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、乳癌から放出されるEVsの脂質組成と既知の臨床病理学的因子との関係を調査すること、特に乳癌組織の免疫活性を反映する血漿中EVsの脂質組成の特徴(Lipid signature)を同定し、その臨床的有用性を検証することである。 今年度は、昨年度に我々が確立した脂質組成解析に最適化した血漿由来EVsの精製方法を用いて、乳癌患者・健常者約150例の血漿を用いて網羅的なEVsの脂質分析を行った。結果、乳癌患者、健常者の間で有意に発現量が異なる3種類の脂質を同定し、これらの組成を分析することで、乳癌患者と健常者を精度よく区別することができる診断モデルを確立した。さらに、探索的解析で乳癌のサブタイプや乳癌の進行度(ステージ)と有意に相関する複数種の脂質の同定にも成功した。この際、測定系の堅牢性を様々な視点から検討し、我々が確立した今回の手法は、被験者の食事摂取の有無の影響、LC-MSの前処理の方法、測定機械の機器のコンディション等の、脂質測定結果に影響を与えうると考えられている既知の外的要因にあまり左右されず、安定であることも確認された。 本成果は、論文化し年度末に投稿。現在、査読審査中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度で、予定していた臨床検体を用いたEV脂質組成の分析は完了し、成果報告を行うことができた。次年度は腫瘍免疫とEV脂質組成の探索的解析を予定通り進めて行くとともに、COVID19による活動制限のため積み残しているin vitroの系での検証作業も合わせて進めて行く予定である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、EVsの脂質組成と腫瘍免疫の関係を、より詳細に探索的に検討していく。特に、in vitroの系での検証を精力的に進めて行く。さらに、がん由来のEVを血漿からより高効率、高精度で生成できる方法を探索し、本年度で作成に成功した診断モデルをさらにブラッシュアップしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はほぼ当初の予定通りのペースで計画は進行したが、COVID19による活動制限により遅延した分を取り戻すほどのペースではなく、前年度繰り越した分、本年度も繰り越しが生じる状況となった。今年度中に研究補助員の確保などもできたため、次年度ではCOVID19により遅延、積み残されているタスクを含め、スピードアップして研究に取り組む予定である。
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