本研究の目的は、乳癌細胞と乳癌細胞から放出されるEVsの脂質組成の関係を調査すること、乳癌原発巣の免疫チェックポイント活性を反映する血漿中EVsの脂質 組成の特徴(Lipid signature)を同定し、その臨床的有用性を検証することの2点である。EVsの精製方法には様々な方法があり、ゴールドスタンダートと言え る手法は確立されていない。前年度までは脂質解析に最適な血漿からのEVsの精製方法の確立を主眼に研究を進めた。様々な検討の結果、改良スクロースクッション超遠心法を用いることで、血漿中のリポタンパク質のコンタミネーションを最小化し高純度でEVを精製できることを確認できた。また、同手法は採血タイミングによらず(食事の影響を受けず)高純度にEVsを精製できることを確認した。また、広範なリン脂質を可能な限り包括的に分析できるようにLC-MSの系をチューンアップした。最終年度では、乳癌患者(n=105)、良性乳腺疾患患者(n=11)、健常人(n=43)よりなる、2つの独立したコホート(n=126とn=33)を用いて血漿由来EVsの包括的脂質解析を実施。リン脂質の組成の違いによって、乳癌患者と健常者・良性疾患患者を区別できる診断モデルを確立した。さらに、探索的な解析で、乳癌のサブタイプの違いや進行度(臨床病期)の違いによって、EVsのリン脂質組成が異なる可能性を明らかにした。本成果は学術誌に論文として報告した。
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