研究実績の概要 |
乳がんはホルモン受容体やHER2受容体の発現に基づきサブタイプが分類され、その治療方 針が決定される。国内外においてホルモン受容体陽性乳がんであるLuminal症例は全症例中 の約70%を占めており、そのうち約20%が予後不良症例であることが報告されている(Dai, X et al., Am. J. Cancer Res. 2015, がん統計’19) 。そのため、ホルモン療法および化学療法における奏功性の改善は急務といえる。 研究代表者はこれまでに、1) 非翻訳型RNAであるmicroRNA-27b(miR-27b)の発現が低下した細胞集団ではEstrogen(ER)受容体の発現が著しく低下すること、さらには、2) そのような細胞集団においてLuminal形質の維持に必須である転写因子のGATA3やFOXA1の発現も低下していることを見出している。本研究では、miR-27bの発現を指標としてホルモン療法および化学療法に抵抗を示す細胞集団の性状解析を行い、難治性乳がんに対する新たな治療戦略基盤の構築を試みた。 本研究の成果として、タモキシフェン耐性乳がん細胞株ではmiR-27bの発現が低下すること、さらには、そのような乳がん細胞ではCEACAM6の発現が亢進することを明らかにした。また、CEACAM6陽性細胞における遺伝子発現プロファイルも取得し、タモキシフェン耐性乳がん細胞の性状を明らかにした。 以上のことから、本研究では、ホルモン療法および化学療法に抵抗を示す乳がん細胞の新規マーカーとしてCEACAM6を同定した。
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